【探求の時間】業務の引継ぎを組織的に進化させる4つの型①
2025年11月29日【探求の時間】業務の引継ぎを組織的に進化させる4つの型③
2025年11月29日
業務の引継ぎを組織的に進化させる4つの型②
前回までに、業務に引継ぎを組織的に進化させる4つの型のうち、①業務の流れ、②行動の型を順に説明してきました。今回は第3の類型である③資料の型から話が始まります。
第3の類型 資料の型
さて、流れと行動が固まったとして、次に必要になるのは第3の類型である「資料の型」です。どんなに優れたプロセスや行動があっても、それらがバラバラのフォーマットの報告書とか、どこにあるかわからないファイルに基づいていたのでは意味がありません。どの場面でどの資料をインプットとして使い、どんな形式でアウトプットをつくるのか。これを定義するのが「資料の型」です。
私もかつて、新しい部署に配属されたとき、前任者がどんなファイルを見て、どんな報告資料を作っていたのかがよくわからず、最初の1か月は宝探しのようになってしまった苦い経験があります。
この資料の型が持つ力というのは、単なる時間節約にとどまりません。組織全体で使う言葉とか指標、報告書のフォーマットが統一されると、部門間のコミュニケーションロスが劇的に減ります。たとえば同じ言葉を使っていても、部署によって言葉の定義が違うこともあります。データのフォーマットが揃っていれば部署をまたいだ分析をやりやすくなるし、経営者も全社の状況を同じものさしで見ることができる。結果的に、意思決定のスピードと質が上がる。情報の共通言語をつくるということです。
第4の類型 思考の型
業務の引継ぎの方法として、4つの型のうち①仕事の流れ、②行動の型、③資料の型を紹介しました。この「流れ」「行動」「資料」という3つの型を最終的に方向付ける最も重要なもの、それが第4の類型である「思考の型」です。思考の型は、判断基準、優先順位、価値観、つまりなぜ我々はそのように判断するのか、という組織の根幹にある哲学の部分です。
これは引き継ぐのが難しそうです。確かに間違いなく最も難しく、しかし最も重要なものでもあります。これは企業の文化とかDNAそのものであるからです。
例えば、製造部門におけるQCD(品質・コスト・納期)。この考え方一つとっても、「何があっても品質を優先する」という会社と「コストを優先する」という会社では、現場での日々の判断が全く変わってきます。
では、このような文化とか価値観はどのように具体的に引き継ぐのでしょうか。「わが社のDNAを心に刻め」と念仏のように唱えても腹落ちはしないものです。何か具体的な方法はないでしょうか。
一つの方法は、過去の重要な意思決定の議事録とか背景説明資料を整備して、引継ぎの際に共有することです。なぜあのときA案ではなくB案を選んだのか、なぜこのプロジェクトは中止になったのか、とか。その背景にある議論とか判断の根拠を学ぶことで、後任者は単なるルールではなく、その組織が何を大切にしているのかという、思考の型を追体験できるわけです。これはストーリーとして学ぶことでもあり、成功事例だけでなく失敗事例とその理由も含めて共有することが重要です。
思考の型まで引き継いではじめて、本当の意味での引継ぎが完了します。そしてこの4つの類型が揃うことで、引継ぎは単なる業務の伝達から、組織の自己分析と文化継承のプロセスへと進化するわけです(第3回の「業務の引継ぎを組織的に進化させる4つの型③」に続く)。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。