中小製造業・工場に「健康経営」を導入するコンサルティング
2022年8月23日中小工場の経営判断に有用な情報を提供します「財務諸表分析」サービス
2022年8月23日
健康経営の考え方を取り入れた工場経営とは?-工場経営者・管理者向けに分かりやすく解説します。
製造業/工場の経営課題
生産性向上
工場では4Mの視点を使って製造現場の生産性を高めていきます。
4Mは材料(Material)、機械(Machine)、人(Man)、方法(Method)の4つの「M」を取って通称4Mと呼んでいます。
製造活動はインプットの資源をアウトプットに変換する活動です。
4Mはインプットの資源です。工場は4Mを使って生産活動を行い、アウトプットである製品を生み出していく場です。
生産性を上げるための視点の一つとして、4M改善があります。4Mをそれぞれ少ないインプットで多くの(より価値のある)アウトプットに変換できるように、活動を改善していきます。
一方で、生産性向上のパターンは4つあります。①少ないインプットでより多くのアウトプットを生み出す、②同じインプットでより多くのアウトプットを生み出す、③少ないインプットで同じアウトプットを維持する、④インプットを増やしてより多くのアウトプットを生み出す、の4パターンです。
生産性向上の方策を考えるときは、この生産性向上4パターンに4Mを掛け合わせて考えます(4×4の考え方)。
生産性を高める4×4の考え方
例えば「材料」であれば同じ値段ならより歩留まりの良い材料、「機械」であれば1時間当たりの生産量が増える機械に変更する、「人」であればトレーニングの時間を確保して技量を上げて生産能力を増強する、方法であれば多台持ちや並行作業を検討して時間当たりの生産量を上げる、というように4×4の考え方を使って生産性改善の方策を検討、選択していきます。
工場では、生産性向上の取り組みが常に求められています。長年培った技術・技能と方法を現状維持でなく発展させるように日々改善を行います。それは業界と競合他社がみな生産性を高めていくので、自社だけ生産性向上に取り組まないとすれば、相対的に他社との競争力が低下して、選ばれない企業に陥ってしまうからです。
工場経営における健康経営の必要性
生産性向上を考えるときに、「人」の問題について考えてみます。人は作業者、技術者、管理者等が存在しています。それぞれ生産性に対して役割分担・職責があり、自らの任務を遂行しています。
もし、「人」が健康でなければ、自らの任務を遂行できず、役割分担・職責を果たせないということが起きます。工場では社員一人一人が何らかの役割を担っていて、仕事が連なって前工程・後工程の関係にあるので、だれか一人が欠けたり調子が悪くて力を発揮できないような状況になると、全体の生産性に影響します。もし病気で人が休んだとなると、生産が滞ったり、場合によっては生産ができない、ということが起きてしまいます。
以下では、人の健康について掘り下げて考えてみます。「人」が不健康で力が発揮できない・・・という状況を考えてみると、「心・技・体」に分けて考えることができます。
「心」の不健康を改善する
心・技・体のうち、「心」は健全な解釈、正しい思考であると考えます。これらから心が健康でよりよい行動が起こせるような状態を目指します。
心の健康は2つに分けて考えます。一つは心のプラス面です。心の状態がプラスの解釈であふれている状態を健康であると考えます。
心がプラスの解釈で前向きになれば行動も前向きになります。そこで「仕事の誇りややりがいが持てる」「仕事に熱心に取り組むことができる」「仕事から活力を得ていきいきとしている」(ワーク・エンゲイジメント)というような状態を目指します。心の状態がこれらの正反対であるときは、不健康であると考えます。
もう一つは心のマイナス面です。これは主にストレスです。仕事上で直面する様々な出来事、特に人間関係の行き違いや上手くいかないときなどに起きるストレスです。
このストレスが発生するような状況においても、自分で解消できていく・対処できている状態にあれば心は健康な方向を向きます。
反対にストレスが解消されない・解決の方向性が見えない・対処できていない状況が続き、ストレスが心理的な負担としてのしかかってくると心が不健康です。
そして困難な状況に対する適応力・耐性・回復力(ストレスに対処する力:レジリエンス)が足りず、その結果マイナス思考の深みに浸かって抜け出せなくなっていくような状況に陥ると、心が不健康な状態であると言え、仕事遂行に何らかの影響が出てくると考えられます。
「技」の不健康を改善する
心・技・体のうち、「技」というのは技術・技能のことをいいます。工場では各人に対して生産活動を進めていくための役割分担があり、それぞれの役割を担ったものが専門知識を身につけ、技能を磨いていきます。
工場ではそれぞれ各人の仕事につながりがあるので、一つのポジションで技能レベルが他よりも極端に引き様な事があると、全体の生産性に影響します。そこでトレーニングの機会を設けて技能の底上げを行ったり、多能工化を進めて各ポジションでスキルを補完し合っていく体制をづくりを行います。
技と生産性の関係を考えると、技に対して必要な学習機会があり、適切な訓練の場があり、技術・技能を磨き上げていく環境にあることが大事です。学びたいと思った時に学べるような環境作りです。
この環境が整っていて、自ら学び技能向上させることができる。さらに自ら目標を持ち、自ら目標を測定し、自ら評価できるような環境にあること。こんな時に人は前向きになり心の健康も確保されていきます。正反対の状況にあれば不健康な状態にあると考えられます。
「体」の不健康を改善する
心・技・体のうち、「体」は体の健康確保のことです。体が健康でなくなると、求められている職責が果たせなくなることが起こり得ます。作業者の体の健康を確保するために、安全衛生のマネジメントが必要になります。
安全衛生はケガと病気をなくすことです。ケガと病気が起きるような職場では、作業者の体の健康を確保できず、生産性に影響します。
ケガと病気を放置するような会社では、どんなに良い材料、良い機械を使ったところで生産は上がりません。体の健康を確保するための安全衛生マネジメントの取り組みが必要になります。
健康経営による生産性向上への貢献
心・技・体は掛け算であると考えています。心×技×体なのでどれかが低ければ他をどれだけ頑張っても生産性は上がりません(例:5×1×5=25)。もし心・技・体のうちどれかがゼロであれば、掛け算なので全体もゼロになってしまいます(例5×0×3=0)。
心・技・体の状態が不健康であれば適切な行動につながらず、各人は自らの任務・職責が果たせないか中途半端になってしまい、工場は全体として生産性が上がらない状況に陥ってしまいます。
そこで工場の経営者・管理者は、現場を見渡して作業者一人一人の心の状態をふまえて健康な状態になっていくように手を打たなくてはなりません。作業者の健康が確保されていないまま、いくら材料・機械を改善し方法をブラッシュアップしたとしても、現場の生産性は上がらないからです。
反対に、心・技・体の健康を確保していくことを考えて対策をしていくことによって、作業者の健康状態が改善されていけば、生産性向上の基礎ができます。
さらに健康確保の活動を継続して高めていくことで、各人の心・技・体の状態がより良い状態になって前向きな行動にかわり、前向きな行動から相乗効果も生まれ、生産性向上につながっていきます。
作業者の健康確保のための活動、継続するための仕組み作り、運用のブラッシュアップの方策を体系的に行い、会社の生産性向上に取り組んでいくことが大事です。
-プロに依頼する健康経営とは-
中小製造業の工場経営において、健康経営の考え方を取り入れた生産性向上支援の方策をご紹介します。
健康経営とは、国の成長戦略の一環として提唱されてきた健康経営に関する取り組みの一つであり、「従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する経営手法」であるとされています。従業員の健康に関する支出をコストではなく、健康として捉える考え方です。
健康問題が追加的なコストとして発生するのは、①従業員がケガや病気で欠勤(会社を休む)状態になるときと、②出勤はしているが体調がすぐれず、生産性が低下する状態があります。いずれも会社の生産性は下がり、生産活動の遂行に支障が出るので、会社としては損失が発生し、追加的なコストの発生と捉えることができます。
このコストを、事件発生後に対処しているうちはいつまでたっても追加的なコスト=回収できないコスト=企業にとっての損失でしかありません。このコストを放置せずにリスクマネジメントを行い、事前に手を打ち、必要な投資を行うことが必要です。
こうして健康問題に起因する損失を回避するとともに、生産性向上に寄与するようなことにお金と時間を投下する。これはコストの発生ではなく、損失回避・成果創出のための投資と考えることができます。作業員の健康確保のために必要な投資を行い成果を得るということで、健康経営は会社の戦略的・全社的・計画的な会社の取り組みになるのです。
確かに、作業者の健康が確保されていないと工場の生産性は上がりません。工場の生産性は4Mで考えますが、4Mのうち「人」の生産性が低ければ、いくら材料・機械・方法を改善しても生産性は上がってきません。そこで人の生産性を確保することが大事です。
人の生産性の影響要因は、心・技・体です。心・技・体が健康であることが大事です。心の健康、技の健康、体の健康を確保することで人の健全性を確保し、「人」の生産性を高めていきます。
当社では、人の生産性を高めるための心・技・体の取り組み-作業者の健康確保のための体系的な活動-を支援するコンサルティングサービスを提供しています。
このサービスは、製造業・工場管理の経験を持つ中小工場専門の健康経営アドバイザーが担当させて頂きます。
主な内容は心・技・体に関する仕組みづくりと運用支援です。企業に訪問し現場視察とヒアリングの上、企業の業態・生産活動の内容・人の特殊性・働く環境等を踏まえ、最適な仕組みを提案させて頂きます。投資であるがゆえに、将来の行動と成果獲得のプランニングを含めて提案させて頂き、健康経営の実践のための仕組みづくりと運用支援をコンサルタントが定期訪問して行います。
<プログラム>
健康経営の実践を心・技・体で考える体系的なプログラム
1.心の健康
(1)健全で前向きな思考づくり → 「ワーク・エンゲイジメント改善」プログラム
(2)ストレス対処の仕組み化活動 → 「レジリエンス改善」プログラム
2.技の健康
(1)専門知識・学習機会の確保 → 「技術・技能のポイント言語化」プログラム
(2)技能向上の実践活動 → 「製造現場OJT実践」プログラム
3.体の健康
(1)安全な職場環境作り → 「安全管理の改善」プログラム
(2)衛生的な職場環境づくり → 「衛生管理の改善」プログラム
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。