【探求の時間】人の成長3段階-人の成長プロセスとは?スキル習得と自己成長の本質にせまる①
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【探求の時間】人の成長3段階-人の成長プロセスとは?スキル習得と自己成長の本質にせまる
人の成長プロセスを考える②
前回まで、人の成長をプロセスを考えるというテーマで、第1段階「知る・わかる」、第2段階「行う・できる」について説明しました。次に第3段階の「高める・人に教える」について考えてみましょう。
第3段階は「高める・人に教える」です。実践を通して新たな気づきを得て、応用する・高める。そして人に教えることを通して社内展開していく段階です。
ここでは2つの要素があり、一つ目は「高める」です。これは「調べる・考える・実践する」のサイクルを継続してさらに洗練させていくプロセスです。単にできるようになっただけではなく、より効率的に、より質高く、あるいは予期せぬ状況にも対応できるような、そういう応用力を身につけていく段階です。特定のスキルにおける熟達というか、常に改善点を見つけてよりよい方法を模索し続ける、そういう姿勢が求められます。
もう一つの要素は「人に教える」です。人に何かを教えようとすると、まず自分の中で知識やスキルを体系的に整理し直す必要があります。なんとなくできているという状態では、人にわかりやすく説明するのは難しい。人に説明しようとして初めて、自分の理解のあいまいな部分が浮き彫りになったりします。教えるという行為は実は教えている本人にとって最高の学習機会であり、理解を深めるプロセスになります。言葉を選んだり、例えを考えたり、相手の疑問に答えようとしたりすることで、そのスキルや知識の本質をより深くとらえ直すことができる。そのプロセス自体が自分のスキルをさらに高めることにつながっていきます。
その結果として、知識とかスキルが他の人にも伝わって、次に社内展開です。個人の成長が自然とチームや会社の力になっていく。個人の成長と会社の成長を考えるとき、個人の熟達、つまり高めることと、他者への貢献すなわち人に教える・社内展開が結びついていくことが重要です。自己成長がそのまま組織全体の能力向上、会社の成長につながる。これは個人のキャリア形成だけでなく、組織の人材育成を考えるうえで、非常に重要な視点だと思います。
あなたも、これまでの経験の中で、例えば後輩に仕事を教えたときに、かえって自分が勉強になったな、と感じたことがあるのではないでしょうか。あるいは、誰かに説明するためにあらためて資料を読み込んだり、自分の手順を見直したり。それこそがこの「高める・人に教える」段階の持つ力であり、醍醐味でもあります。この段階に至ると、学びが自己完結しなくなって、他者との関りの中でさらに豊かになっていくという広がりが生まれます。
まとめですが、まず、知識や情報をインプットする第1段階、次に実際に試してみて試行錯誤しながら自分のものにしていく第2段階。さらにそのスキルを磨き上げて応用力をつけ、人に伝えることで自分も周りも成長していくという第3段階。こうして段階に整理してみると大きな成長のサイクルが見えてきます。
ただ、実際の成長プロセスは必ずしもこの順番通りに一方通行で進むとは限りません。たとえば、第3段階で人に教えているうちに新たな疑問が生まれて、第2段階の「調べる・考える・実践する」段階に戻るということもあります。そこで得た気づきが、まったく新しい分野の「知る・わかる」、つまり第1段階につながるということもあります。行ったり来たりしながら、らせん階段を上っていくようなイメージかもしれません。特に第2段階でカギになっていた「調べる・考える・実践する」という能動的なサイクルですが、これは第3段階で「高める」段階においても、形は変わりながらも熟達の為には不可欠です。常に問いを持ち続けて、探求を続ける姿勢が、成長を持続させる燃料になるのではないでしょうか。
この3段階モデルは非常に実践的に使えます。例えばあなたが何か新しいスキルを学んでいるとしたら、自分がどの段階にいるのかを客観的に見つめることに役立ちます。あるいは「知る・わかる」の段階で止まっていないだろうか。「行う・できる」段階での試行錯誤をちゃんとおそれずにできているか。そして、ゆくゆくは「高める・人に教える」段階にどうステップアップしていくか。そういった自己分析や、今後の学習計画を立てる上でこのモデルは強力な羅針盤になってくれるはずです。
最後に、今日の探求を踏まえて、さらに思考を巡らせるための問いを考えてみたいと思います。第3段階では、人に教えることが会社の成長につながるという話がありました。これは知識とかスキルを直接的に伝達することの効果です。もしあなたが第3段階を経て、あるスキルとか知識を深く習熟させて高めたとして、その成長が人に直接教える行為以外では所属する組織やチームに対して、どのようなポティブな波及効果を生み出す可能性があるでしょうか。
たとえば、あなたが高度な問題解決能力を身につけたとして、その能力を使って、これまでだれも解決してこなかったような課題に取り組む。その姿勢が周りの人々のモチベーションを刺激するかもしれない。あるいは、あなたが効率的な働き方を実践することで、チーム全体の生産性が向上するという、間接的な貢献もあるかもしれない。あなたが高めたことによる影響は、必ずしも教えるという形だけではないはずです。あなた自身の成長が、ことばとか直接的な指導を超えて、周囲にどのような価値をもたらしうるのか。その点について考えてみるとまた新たな発見があるかもしれません。
自分の成長が意図せずと周りに影響を与えている可能性。それを意識することは新たな成長の動機づけにもなりそうです。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。