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2025年9月21日
【概要】
やめる人が多い会社の共通点
同じような業種・業態・規模の会社であったとして、人が定着する会社とすぐに退職する人が多い会社に分かれます。その違いは何でしょうか。この問題意識から企業を分析してみると、やめる人が多い会社には共通点があることがわかってきました。
本稿は、従業員が辞めやすい会社に共通する問題点を、「仕事の属人化」「仕事の教え方」「仕事の習熟」「コミュニケーション」という四つの側面から検討しています。特定の個人に業務が集中し、やり方が標準化されていない「仕事の属人化」は、負担の偏りや品質のばらつきを生じさせます。また、教育体制が不十分で教える人によって内容が異なったり、目的が説明されない「仕事の教え方」も離職の一因です。さらに、スキルの習得過程が不明瞭で、ミスの原因が共有されない「仕事の習熟」の課題や、命令が多く情報共有が不足している「コミュニケーション」の問題も影響があると考えられ、これらの要素が従業員の不満を高める共通点になっています。
人が会社を辞めたくなる時、何か共通のサインがあるのでしょうか。今回はやめる人が多い人の共通点として4つの側面、「仕事の属人化」「教え方」「習熟」「コミュニケーション」に注目して、どういうふうに絡み合って人が離れる原因になっているのかを考えていきたいと思います。
1.仕事の属人化
仕事の属人化は、特定の仕事のやり方や知識が、特定の人にしかわからないような状態です。あの人にしかわからない業務がある、やり方が人それぞれでやり方が標準化されていないというようなことです。
属人化で問題なのは、単に非効率というだけでなく、組織全体の学習能力を少しづつ弱めてしまうという点です。知識とか改善点が共有されたり標準化されたりしないと、個人の経験がなかなか組織の力にならない。その結果同じような問題が繰り返し起きたり、結果としてチームとしての対応力も上がりにくくなることです。これは個人だけでなく、チームとか組織全体の成長が滞ってしまうということにもなります。
2.仕事の教え方
属人化の問題は仕事の教え方にも密接にかかわってきます。たとえば教える人によって言うことが違う、作業の目的や背景を説明してくれない、口頭だけでマニュアルがない、などの点。これらは学ぶ側にどんな影響があるのでしょうか。
指示がバラバラだったり、理由がよくわからなかったりすると、学ぶ側の人にとっては何を基準に判断したらよいのだろうと見失いがちです。これは自分で考えて動くとか何か改善提案をするとか、そういうのを難しくしてしまう可能性がある。言われたことをただこなすだけという受け身の姿勢を冗長しかねない。人は明確な基準とか何かよりどころになるものがないというのは不安に感じるものです。自分がどう動けばよいかの軸が持てないというのは、特に新しく組織に入った新入社員にとってはかなりつらいことです。
3.仕事の習熟の問題
上記の問題によって成長が感じられないという点は、仕事の習熟にも影響します。覚えるべき事の全体像が見えない、どうすればスキルアップできるのかその道筋が不明。ミスをするとただ叱責されるだけで原因究明がない、評価が不公平に感じるとか。これらはかなりモチベーションに関わってきます。人は成長しているなという実感とか、ちゃんと見てもらえているなという感覚が大事なものです。そのためには、目指すべきゴールと、そこに至るまでのステップがはっきりしていること、日々の努力とか成果が公平に評価される仕組み、これらが欠かせません。ミスに対するフィードバックについても単に叱るのではなく、次にどうすればよいかにつながるような建設なもの-建設的なフィードバック-であってはじめて成長の糧になるというものです。
これらがあいまいだと、貢献したいという意欲を保つのはやっぱり難しいのです。成長への道筋とそれを支える評価やフィードバック、これがあいまいだと確かにがんばりがいがないというか、やりがいや前向きな意欲を持てないとか、そういう気持ちになるかもしれません。
4.コミュニケーションの問題
アメとムチのような外発的な動機づけが多いような職場では、指示命令ばかりで自分で考える機会が持てません。また、必要な情報が共有されない、誰に何を聞けばよいのかわからないような状態がある。このような状態は、従業員の主体性にはどう影響するのでしょうか。
この点については、一方的な指示とか情報が足りないという状態は、従業員をただのコマみたいに感じさせてしまう危険性があります。自分が組織の一員としてちゃんと尊重されていて貢献しているんだという感覚、いわゆるエンゲージメントですが、それが育ちにくい環境になってしまう。特に、自分で考える機会がないというのは、問題解決能力や当事者意識の成長を妨げてしまう。結局は組織全体の活力を損なってしまうということにつながる可能性が高いのです。
5.まとめ
やめる人が多い会社の共通点として、「仕事の属人化」「仕事の教え方」「仕事の習熟」「コミュニケーション」の問題があり、この4つの側面が人が定着しない会社に共通してみられる症状として指摘しました。こうして4つの側面を見てみると、単なる個別の問題点というよりも、仕事の進め方、学び方、評価、情報共有といった、その仕組み全体の一貫性が無かったり、あるいは従業員の成長や主体性を支える配慮が欠けていたり、そういうものが複雑に絡み合っている姿であると言えそうです。あなたのまわりでは、これらの点がどのように現われているでしょうか。これは組織のあり方を考えるうえで非常に重要なことだと思います。
最後に、思考を深める問いを一つ。たとえば不明確な教え方が仕事の属人化をさらに根深くしているとしたら、改善の第1歩はどこに置くべきでしょうか。
あるいは、組織の中の情報伝達の方法を見直すことが、従業員が感じる習熟への道筋をどういうふうに明るく照らす可能性があると感じるでしょうか。
こうしたつながりをちょっと解きほぐしてみることで、また何か見えてくるのかもしれません。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。