AI時代に備える!現場ノウハウ蓄積できていますか「技能伝承プログラム」
2022年11月24日中小製造業の「ペーパーレス化」で困ったら-中小工場のペーパーレス化の進め方・方法をわかりやすく解説
2022年12月3日
工場で行われる小集団活動とは
小集団活動は、グループ活動によって職場を改善していく活動です。
複数人で知恵を出し合ってより良い改善をしていくことができるので、一人の改善よりも大きな改善に取り組むことができます。
また、グループで活動することにより、目的意識・役割分担・協働意欲を喚起することができ、社員一人一人の仕事に対するモチベーションを高めていくことが期待できます。
QCサークルは品質改善を目指して小集団で行う職場の改善活動です。QC手法を活用して職場で改善活動を継続的・自発的に行っていく全社的な活動です。
中小工場の小集団活動の必要性
生産活動を行う上での生産組織が成立する・機能するための3要件として、①共通の目標、②協働意欲、③コミュニケーションが挙げられます。
組織の構成員が共通の目標に対して自らの役割と責任を認識し、他者とのコミュニケーションを取ながら、協働意欲を持って取り組むことによって、組織の目標を達成していきます。
小集団活動を行うことにより、現場の社員が身近な実体験として組織成立3要件(共通の目標、協働意欲、コミュニケーション)を持って組織を動かしていくことを学ぶことができます。
中小工場の小集団活動の進め方
① チーム編成
小集団活動は10人以下のチームで動くものといわれています。ただし実際には10人となると結構な大所帯で、意見を言わない人がいても物事が進んで行きがちです。そこでメンバー数を4人~6人くらいに絞ると、それぞれに自分の役割が出てきてメンバーの当事者意識も高まってきます。
中小工場の場合は2~3人のチームになることが多いです。社員数が20人の会社の場合、各部署・各職場のメンバーが2~3人くらいのことが多いからです。2~3人では少ないかというと、そうでもありません。共通の目標を持って役割分担を明確にして取り組むことを意識していれば、成果の上がる活動になります。
② メンバーの選定
メンバーは職場横断型のチーム編成にする場合と、職場内でいつものメンバーで編成する場合があります。取り組むべき改善テーマによって必要なメンバーを選定するのが通常です。ただし部署間のコミュニケーション促進のために横断型チーム編成をするケースもあります。
メンバーの中で役割分担を決めることがポイントです。リーダーを決めることとその他の役割分担を決めます。各役割のやるべき事も明確にします。各メンバーがそれぞれ自分の専門知識・経験を持ち寄って一つのテーマを解決できるようになっているとメンバー間でより協働意欲が働きます。
③ 改善テーマの決め方
改善テーマは通常はチームで自分たちで改善テーマを見つけ、自分たちで設定します。小集団活動が自発性・自主性を磨くことを狙いの一つとしているからです。
ただし改善活動の経験が全くないような職場で、初めから「テーマは自分たちで考えて」と言うように投げかけると、みんな何をしてよいのかよくわからないまま戸惑います。
テーマ設定があいまいだとその後の改善活動はすべてあいまいになり、結果もあいまいで、成果のない改善活動になってしまいます。テーマ設定が的確にできていないうちは会社から大きめのテーマを提示して(例えば5S、安全、品質改善など)、チームごとに小テーマを考えさせるようにすると進みやすくなります。
④ 進め方
通常は次のような項目に沿ってワークシートをつくり、シートに書き込んで行きながら進行していきます。
(例)
・改善テーマ、選定理由(問題意識)
・日程計画
・現状把握と分析
・原因の掘り下げ
・対策の検討
・実施
・効果の予測、結果の測定
・歯止め策(維持定着の方策)
・報告、今後の課題
期間は3カ月~6カ月で完結するような規模のテーマが良いでしょう。ある程度時間のかかる改善テーマを設定し、チームで動いて協力・働きかけ・協働などの体験を積めるようにします。
改善活動を全くしたことのない、経験のない職場でいきなり6か月の期間で行うと、間延びして持たないか進まなかったりするので、テーマを小さくして1か月で回転させ、小さな成功体験を積み上げてだんだん大きなテーマに取り組めるようにすることもあります。
⑤ 報告会
中小工場の小集団活動は全社的な活動にすることが大事です。全員参加にします。20名規模の工場では、4人のチーム×5チームくらいにして全員が何らかの役割を担っている状態にします。全体の進捗管理は社長か工場長が務め、社員を励まして成功できるまで指導・支援します。
改善活動を最後までやり遂げたら報告会を設けて、相互承認の場を作ります。社員が相互に他の人の(他のチームの)取り組みを知れるようにして、お互いの努力と成果を理解します。改善は基本的には何か一つでも事が進めば変化が生まれて成果になるはずです。相互承認の場を用意してお互いに次へのモチベーションを高めるようにします。
⑥ 事後対応
改善後の成果は一定期間経過しないとわからない場合が多いので、活動後のモニタリングが必要です。1か月後、3か月後などモニタリング期間を決めておき、意図した改善成果が得られているのかどうか、実際を測定して確認します。
改善の成果が出ていない、元に戻っている、解決していない・・などの問題が起きていることがあります。成果を着実に得ていくために、修正の場を設けることが大事です。
小集団活動の実施の重要ポイント
ポイントは次の4点あります。
① 計画性
会社としては小集団活動を行う目的、目指す成果、仕組み化の内容を決めることが必要です(なんとなくはじめるとなんとなく終わる)。
改善活動の計画性は、いつ・だれが・なにを・いつまでに・どのていどやるのかを明確にするようにします。
② 改善テーマの具体性
改善テーマの設定が抽象的(あいまい)であるほど、活動もあいまいになり、成果もあいまいになります。反対に、改善テーマを具体的に設定するほど、具体的な活動になり、成果も具体的になります。
③ 進め方の論理性
現状分析→原因の掘り下げ→対策の検討→実行→検証のプロセスを大事に積み上げていくように進めます。どれかを省略したり、どれかをあいまいなまま次に進めると、最後の成果もあいまい・不明確で活動のモチベーションにならず、継続しない改善活動になってしまいます。
④ 参画意欲
一人一人が共通の目標を意識して、自分の役割を認識し、自分の専門性を発揮してチームに貢献できるような環境づくりが大事です。人ごとのように見ている人がいたらリーダーは見逃さずきちんと話し合い、改善活動が自分ごとになるように働きかけをします。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。