富山県経営者協会様にて講演-成果の上がるOJTの進め方について
2026年2月23日【探求の時間】成長加速の鍵は「守・破・離」-成長のフレームワークを考える②
2026年3月14日
成長加速の鍵は「守・破・離」-成長のフレームワークを考える①
今日のテーマは「守・破・離」です。メンバーの成長を加速させるための、古くから伝わるフレームワークです。守破離の考え方は自分自身が何か新しいスキルを学ぶ上ですごく強力な武器になる考え方です。基本を学んでそれを自分なりに発展させて、やがては独自のスタイルに確立する。この3つのステップを変化の激しい今の時代にあてはめて考えてみたいと思います。
「守」について
「守」の段階では基本の型を一つに決めることが始まりです。ところで、こんなに変化の激しい時代にひとつの型に固執することはかえってリスクではないかとも思えます。たとえば必死に覚えた先輩のやり方が2年後には時代遅れになっていた、ということもあり得ます。むしろ適応能力のほうが大事なのではないか。
確かに、もし「守」を単なる思考停止の丸暗記と捉えると、それは硬直化を招く危険なワナになります。しかし本来の「守」の目的はそこにはなく、思考のエネルギーを最適化することにあります。
初心者がいきなり最適なやり方は何かとゼロから模索し始めると、選択肢が多すぎていわゆる決断疲れに陥ってしまいます。エネルギーが「何をすべきか」という迷いに分散されてしまい、キモであるどううまくやるかという実行の質が高まらないのです。選択肢が多すぎるとかえって選べなくなる。あるいは選んだものへの満足度が下がる。つまり守とは、あえて選択肢を一つに絞ることで、学習者をそのパラドックスから救い出す戦略なのです。そしてただ真似るだけではなく、なぜこの型はこうなっているのかという、背景にある原則とか思想を理解しようとすることが大事です。
ある人の話ですが、自身がかけだしのころに、当時の上司が細かいルール・指示を課してきました。すべてがガチガチに決められて同じパターンでの練習を繰り返しました。当時は「もっと自由にやらせてくれよ」と不満に思っていました。でも何年もたってから気づいた。その型が完全に体に染みついたおかげで、今ではその作業の進行において一切悩むことがない。自分の思考エネルギーの100%を価値あるものを作り出すという本質的な部分に注ぎこめるようになった。すなわち、その上司が授けてくれた厳格な型は、結果的に自分を自由にしてくれたのです。
基本の型を決めてそれを繰り返すというのは、この状態を目指すための現在の認知的な負荷を軽くするプロセスであって、不自由さが後の自由を生むための土台になる。しかも重要なのはその型自体がもし時代遅れになったとしても、その背景にある、原則や理由を学んでいれば、新しい環境にも応用が利くということです。そこまでいけば、「守」は単なる模倣ではなく、本質をつかむための最短ルートになります。
「破」について
強固な土台をつくったら、次のステップに進みます。いつまでも師匠の真似だけではいられない。どこかで自分らしさを加えていく必要がある。ここが多くの人がつまずきやすい、そして最も苦しくて、最も成長を実感できるステップでもあります。場数を踏み、経験を重ね、既存の型に工夫を加えて発展させる。経験から学び、経験学習を繰り返すことで状況に応じた工夫を習得させる。
「経験学習」は経験したことをやりっぱなしにするのではなく、行動したこと・プロセスと結果について振り返りをして、学び・気づきを得て次の行動に生かすということです。
「守」から「破」に至るプロセスは作業から創造へ、変化の瞬間です。真似で学んだ原則を理解しているからこそ、どこを変えたらよくてどこを変えてはいけないかの判断ができる。単なる自己流の思い付きとは質が全然違います。
ここでの「破」は反抗とか否定ではなく、意図的な逸脱です。真似で気づいた土台へのリスペクトも不可欠で、この土台が無ければただのカタナシです。
この「破」の段階は精神的にも大変です。成功体験ばかりではなく、失敗して元の型通りにしておくほうがよかったなということもあります。だからこそ、上司やメンターのような存在、役割が重要になります。失敗を責めるのではなく、うまくいかなくても何がげんいんでうまくいかなかったのかを一緒に考える。あるいは、思いがけずうまくいったときなど、何が背景にあったのか、何が良くできていたのか、ともに振り返りをして、振り返りをサポートする。このようにして心理的安全を確保することが挑戦を継続するために不可欠です。すなわち「守」の段階で得た自信を、「破」の段階の失敗で完全に打ち砕いてしまわないようなサポートが必要です。(成長加速の鍵は「守・破・離」-成長のフレームワークを考える②につづく)
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。