経営コンサルティングの事例-中小企業・製造業・工場の業務改革、生産性向上支援
2022年5月19日6月のオンラインサロン読書会のお知らせ
2022年6月6日
中小企業・製造業・工場の経営コンサルタントの仕事をしています。特に20人規模の工場の生産性向上を支援しています。普段当社が行っている業務から、よく見られる工場の困りごとと主な解決策を紹介します。
製造業のケガ・事故の発生状況
厚生労働省のホームぺージより「労働者死傷病報告 製造業における労働災害発生状況」の調査から読み取ると、製造業における令和2年の死傷災害状況は以下の通りでした。
1位 はさまれ・巻き込まれ 6,209件
2位 転倒 5,094件
3位 墜落・転落 2,943件
4位 動作の反動・無理な動作 2,595件
5位 切れ・こすれ 2,320件
「はさまれ」と「転倒」が多く、この二つで全体の6割近くを占めています。小規模工場の安全対策をしていくためには、まず「はさまれ」と「転倒」の対策をしていくことが重要です。
「おちる、ころぶ、はさまれる」の3つをなくそう!ということです。統計的な数字だけでなく、私自身の工場で働いていた経験から、この3つが特に遭遇しやすい出来事だといえます。
「おちる・ころぶ・はさまれる」をなくそう
「おちる・ころぶ・はさまれる」の3つの対策をしていくだけで工場のケガはかなり減ります。
「おちる」というのは、どこかから自分が落ちるということもありますが、工場ではモノを「落とす」、モノが「落ちてくる」ということもあります。何かを落として・落ちてきてケガをするとうことです。
「ころぶ」というのは、工場では固い物・いろいろな形の物が存在しており、モノが突起していることがあり、また足元の段差やコード類などがきっかけになってつまずいて転んで、ケガをするということです。工場でもし転んだときは、固いものが身の回りに多数存在していることから、大けがになります。
「はさまれる」というのは、固い物に指が挟まれることが多いです。モノとモノ、モノと道具、落ちてくるものなどに指や手足が挟まれます。扉がたくさんある工場もあって、扉で指を挟むこともあります。
「おちる、ころぶ、はさまれる」の対策をいかにしていくかが、小規模工場の作業現場において安全な職場をつくっていくための重点ポイントです。
工場のケガは不安全状態と不安全行動から起きる
ケガの起きる原因は、不安全状態と不安全行動です。
不安全状態は、例えば重量物を不安定な高いところに置く、長尺物を壁に立てかける、足元や目線位置の突起物の存在、棚からモノがはみ出している、安全ガードや緊急停止装置がついていないというような状態です。
不安全な状態は、その後に状態の変化が起きたときに何らかの事故につながり得る、危険が潜んだ状態です。重量物が落下・転倒し、人に激突して・挟まれて大けがをする、足元の突起物につまずいて転び、体を打ち付けて大けがをする、あるいはモノにつまずいたときに身体がひっかかり裂傷を負う、などです。
状態を放置するとケガがいつ起きてもおかしくない状態を放置することになるから危険であり、対策が必要です。
不安全行動は、例えば機械道具類の点検をしない、機械操作や作業手順を守らない、保護具を正しく用いない、服装の乱れ(特に袖、裾など)などの人の行為です。
人が決められたことをしないか、もしくは決まりもないけれど危険なことをして、その行為が何らかの動力と接触したりいつもと違う変化が起きたようなときに、事故につながります。
人の行為は、ルールを守らなかったときの他、間違えたとき、注意力が不足しているとき、知らなかったときなどに危険な行動になって事故のリスクが上がります。
したがって普段から、間違いが置きにくい作業方法を設計し、ルールを守ることを啓蒙し、集中力を高めるような日々の働きかけがあり、知らないことがないように教える仕組みを作っていく活動をしていく必要があります。
新人さんが増えて安全対策の必要性が高まっている
工場では最近は人の入れ替わりが頻繁に起きることが多く、新しい人が工場に入社してくる場面を多く見かけます。工場で働いた経験のない人も多く入社してきます。
新しく工場で働く人、はじめて工場に入る人は、その工場で起こり得るケガ・危険に対する感度が高くはありません。その工場のベテランの人であれば「危ない」ということを察知して事前に予防行動をとるようなことであっても、新しい人はそもそも「危ない」と感じないことがあり、いかにもケガのおきそうな危ない行動をとることがあります。
最近の工場では人の入れ替わりが多く起きていることから、危険に対する感受性の低い人が増えていて、今まで何十年とその工場では起きなかったようなケガが、最近になって続けて起きる、というようなことがあります。
今までは何十年と長く勤める人で工場が成り立っていたので、ベテランの人たちは危険に対する感受性が高く、自然に予防行動がとれていました。しかし長く務めたベテランの人たちが退職し、新しい人も入ってきて、ここ10年の間に人の入れ替わりが頻繁に起きるようになっているような工場も多く、新しい人が工場に増えていることに対して対応が変わっていないことがケガが起きる要因になっています。
工場の新入社員教育のメニューに、もっと安全対策に関する内容を取り入れて、工場に入る時から安全意識を上げていく必要があります。小規模工場においても、建設業で徹底して行われているような、新入社員、新規の工場入場者への安全に関する教育訓練の仕組み化が必要です。
工場の安全対策は昭和の時代から真摯に取り組んできたことではありますが、この10年の経営環境の変化から、安全対策の目的や対策の仕方も質が変わってきています。
特に新しい人を多く採用するような工場では、安全な職場作りの対策を見直していく必要があります。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。