工場勤務を改善!小規模工場の改善活動が定着しない理由
2022年3月6日小規模工場の改善活動を活性化するには-共通の目的が大事
2022年4月17日
フロンティアの小林です。経営コンサルティングでかかわった小規模工場100社を分析して明らかになった小規模工場マネジメントの成功要因を紹介しています。今日のテーマは「小規模工場における改善活動の内容・結果の違いの比較」です。
工場によって改善活動の内容・結果に違いがある
小規模工場の製造現場における改善活動には3つの段階があり、第1段階は個人提案を主とした個人レベルの改善活動です。第2段階は部署内でメンバーを集めて行うグループ活動による改善活動です。第3段階は、会社の事業計画や中期的な経営課題に基づいて、部署横断的にメンバーを集めるなどして全社的に取り組む改善活動です。
このブログでは、第2段階のグループによる改善活動について考えてみます。
グループ改善活動は、何人かのメンバーが集まって、リーダーを決めて、グループで知恵を出し合って職場の改善を進めていく活動です。人が集まるので、人ごとに認識や意欲にバラつきがあり、活動内容や成果に違いが出てくる可能性があります。
小規模工場を比較してみると、多くの工場でグループ改善活動に取り組んでいますが、取り組み内容や生み出す成果、社員の行動パターンに大きな違いがあります。そこでグループ改善活動の内容・結果の違いについて、次の3つに分類してみました。
1.継続する、活性化する、成果が出る(良いパターン)
2.継続してはいるが、やらされ感の中で仕事をしているのであまり成果が出ない
3.行動がバラばらで、参加する人しない人がいる、成果出ない、続かない
グループ改善活動の内容・結果の違いを3分類した
1.継続する、活性化する、成果が出る(良いパターン)
まず良いパターンの工場ですが、改善活動が継続に進められ、普段の仕事の中に織り込まれています。改善活動によって日々仕事の生産性が上がっていく、QCDのレベルが上がっていくようなことが自然に行われています。
改善活動の進め方も定められており、報告や評価の仕組みも整っています。多少人によってばらつきはあれど、基本的には社員が皆改善活動の必要性を理解していて、仕事の中で自分事に捉えて前向きに取り組んでいます。
2.継続してはいるが、やらされ感の中で仕事をしているのであまり成果が出ない
このような工場では改善活動が行われていますが、無理に取り組んで何とか成果を出しているという雰囲気があります。
改善活動のための時間が普段の仕事とは別枠で設けられており、改善活動に参加することを半ば強制的になっている。社員は自主性というよりは「言われたから仕方なく」という感じで、やらされ感の中で改善活動に取り組んでいます。
このような状況では、改善活動は続くけれど、誰か一部の人だけが真剣にやっていて、多くの人は他人事、成果の出ない形式的な改善活動に陥っていることがあります。
3.行動がバラばらで、参加する人しない人がいる、成果出ない、続かない
このパターンの工場の場合、改善活動をしたりしなかったり。していてもやり方がバラバラで人によって改善の行動が異なります。
人の解釈もバラバラで、同じ事実に対してもある人は「よい」といい、ある人は「悪い」といいます。
改善活動の方法が定まっておらず、人によって活動内容や成果、評価にバラつきが大きく出ます。この場合の評価が不公平になりがちで、社員に納得感のないものになることが多く、目指すものもない中で「やってもムダ」の雰囲気が出てきて先送りになり、次第に自然消滅していきます。
改善活動の段階を踏んで発展させていくことが大事
小規模工場で行われているグループ改善活動の内容・結果の違いについて、上記では次の3つに分類してみました。
1.継続する、活性化する、成果が出る(良いパターン)
2.継続してはいるが、やらされ感の中で仕事をしているのであまり成果が出ない
3.行動がバラばらで、参加する人しない人がいる、成果出ない、続かない
小規模工場100社中のA・B・Cの割合をおおざっぱに言うと、2:6:2くらいでしょうか。目標とすべきは「1.継続する、活性化する、成果が出る(良いパターン)」の状態ですので、もし自社が「2.継続してはいるが、やらされ感の中で仕事をしているのであまり成果が出ない」、「3.行動がバラばらで、参加する人しない人がいる、成果出ない、続かない」に当てはまっている場合は、段階的に業務改革を進めて、より良い状態になることを目指すようにします。
3.行動がバラばらで、参加する人しない人がいる、成果出ない、続かない」場合のレベルアップ方法
もし自社がこの状況に当てはまっているときは、まず改善活動の仕組みをつくることが必要です。会社として改善活動の目的は何かを定義し、目指す姿を決めます。改善活動をどのように進めるか、いつだれがどのように取り組むのかを会社として決定します。次に改善活動を実際に進められるように、改善活動の目的・内容を周知し、改善活動の時間を取るようにします。
改善活動の時間ですが、改善活動を行っている小規模工場を比べてみると、月に2回、隔週で1時間程度、普段の製造作業とは別に集まる時間を取ることが多いようです。多い工場だと毎週1回、少ない会社だと月1回くらいの割合です。
1回あたり何時間とるかは会社によってバラバラですが、1~2時間が多いです。何時間がベストかというのは目的・内容によって異なるので一概には言えませんが、私は月に2回、隔週で1時間程度を継続的にやってみるのがムリなく続けるための最初の段階ではないかと思います。
なお究極は改善活動の時間をあえて取る必要がなく、日々の仕事に改善活動が織り込まれている状態ですので、これを目指すようにします。しかし活動が定着していない状態では、まず仕事の習慣の一部として改善活動の視点を取り入れていく必要があるので、最初はあえて改善活動の時間と取って実施するほうがよい結果につながります。
時間を取らずにいきなり改善活動の号令をかけても、みな何をしたらよいか具体的なイメージがわかないので、行動がそれぞれあいまいでバラバラになるのです。そこで改善活動の時間をとって活動を具体的にしてやり抜く体験を得させることで、次にどのような行動をすればよいか自分自身で分かってくるようにするわけです。
他に、改善活動の内容・進捗が分かるように、活動内容を順次書き込めるようなフォーマットを用意します。活動したことをアウトプットして記録します。記録したものを社内で公開してだれもが進捗がわかる状態にします。当事者はアウトプットした資料に基づいて経過報告もできるし、周りの人はアドバイスもできます。
最初のうちは自由に改善テーマを出してもらうようにしますが、いきなり良いテーマは出にくいものなので、最初は経営者・管理者からテーマを投げかけて社員一人一人が考えられるようにしても良いでしょう。
まずは活動を始めようというときに、形あるものに残っていくような状態を作っていくことが、Cタイプの場合の改革ポイントになります。Cタイプに陥っている工場の共通していることは、改善活動のあらゆる面が「属人化している」ということだからです。
「2.継続してはいるが、やらされ感の中で仕事をしているのであまり成果が出ない」場合のレベルアップ方法
自社がこの状況に当てはまっているときはマンネリ化している懸念があるので、改善活動の目的を会社としてあらためて定義すること、改善活動の結果何を目指すのかを再認識することが必要です。
この場合は、改善活動はある程度定着しているものの、いったん踊り場に入っていて、テコ入れが必要な段階です。すでに改善活動の仕組みが何らかの形で存在しているはずですので、再点検してみましょう。
まず改善の目標が適切か、活動計画は立てられているかをチェックします。
目標設定がマンネリ化していることがあるので、会社の目指す方向性を明示したうえで、顧客・会社・職場に貢献できる目標が立てられるようにサポートすることが必要です。
何らかの「変化」が成果につながることがあるので、職場をどのように「変化」させていくかを社員に問いかけることがポイントです。
改善活動の目標設定を個人個人の目標設定と関連付けることも必要になってきます。会社の中に目標管理制度のような仕組みがあれば、改善活動とリンクさせるようにします。
また、目標にはインプット目標(行動目標)とアウトプット目標(結果目標)があるので、自分の立てたアウトプット目標に対して、どのような行動をとることによって実現していくかのインプット目標を立てるようにします。自分で目標を立てて自分で評価できるようにすることがポイントです。面談制度などを使って管理者がメンバー一人一人に対して働きかけ・支援・動機付けができるようにするとなおよいです。
さらに、目標の設定があいまいで活動の成果の把握・成果の評価があいまいになっていることがあり、これが原因の本質になっていることが多いです。一人一人の行動改善を促すために個人の目標設定に具体的に関わっていくことが必要です。
ただし、目標設定を強制的・外発的にするとかえってモチベーションが下がってしまうので、自己目標設定・自己測定ができるように環境づくりを進めていくことが必要です。
なお、自己目標設定をするときは、前提として会社が改善の目的や目指すべき方向性を明確に示し、その範囲内で皆が知恵を出し考えていくようにすることが大事です。そうでないと一人一人が会社の価値観・基準ではなく自己都合で考えるようになり、余計にばらばらになってしまうからです。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。