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フロンティアの小林です。経営コンサルティングでかかわった小規模工場100社を分析して明らかになった小規模工場マネジメントの成功要因を紹介しています。今日のテーマは「小規模工場の改善活動を活性化するには-共通の目的が大事」です。
【要約】
小規模工場の改善活動を活性化するには共通の目的が大事で、①共通の目的、②共通の目標、③職場の目標、④個人の目標を設定し、これらに一貫性を持たせて社員のベクトルを合わせていくことがポイントです。
改善活動には共通の目的が必要
小規模工場の改善活動を継続し、改善活動から成果を上げていくためには社員の間に共通の目的があることが大事です。
改善活動がすぐに続かなくなる、定着しない、マンネリ化する、いずれ自然消滅する・・・こうした症状の原因の多くは、社員の間に「共通の目的」がないということです。
目的がないまま改善活動に取り組むと、社員の間に先が見えなくなり、改善活動をしたところでどうなるの?という疑問が湧いてきて改善活動を継続する意欲が失われていくことが起きます。
改善活動を進める場合のステップ
小規模工場において、会社全体で改善活動を進める場合のステップとして、次のプロセスを踏むことが重要です。
①会社として改善活動を実施することの目的を定義する(共通の目的)
②会社として改善活動を実施することによって達成すべき目標を明示する(共通の目標)
③会社の目標をふまえて、職場ごとに活動目標を設定する(職場の目標)
④職場の活動目標に対して改善テーマを設定し、改善目標を立てる(改善目標)
⑤改善目標を達成するための個人の行動目標を決める(個人の目標)
①が会社としての共通の目的、②が会社の共通の目標、③が職場の共通の目標、④が改善目標、⑤が個人の行動目標です。①~⑤は一貫性を持つことが必要です。一貫性というのは、①から②、②から③、③から④、④から⑤の順に導かれてくるという関係です。
小規模工場において、続かない改善活動の特徴として、①②③の共通の目的・共通の目標があいまいであることが多く、あいまいなまま改善目標を立てるので、改善活動自体が目的化して続かなくなるというわけです。
改善活動を活性化するために、共通の目的・目標を見直す
小規模工場において、改善活動が亭々している場合には、活性化していくための方法として、まず組織として共通の目的・目標が明らかになっているかを点検します。目的・目標がない場合には設定し、あいまいな場合には明確にし、ある場合には再定義します。
共通の目的
改善活動に共通の目的がないと、皆が目的のないことをしていることになるので、改善活動をやりながら「こんなことをやって何になるの?」とか「やってもムダ」という発言が聞かれるようになります。
目的がないので「言われたからやる」「仕方なくやる」というように受け止め、やらされ感の中で改善活動をすることになるので、成果もでないし活動が続きません。
もし社員の間から「やってもムダ」発言が出ており改善活動がうまく進まないという症状がある場合、共通の目的が明確になっているかを点検する必要があります。
共通の目的とは、会社の目指す方向から導かれます。会社の理念・ビジョンがあり、顧客はだれで、顧客の要求・ニーズはどんなことがポイントになっていて、ライバル企業はどんなことが評価されていて、自社にはどんなことが期待されているか。
反対に、何をしてはいけないか、を明確にする。そして当社として持っている強み・技術の中核を明確にしたうえで、業界の潜在顧客・既存の顧客に対してどのような貢献をしていくか、相手にとってどんな価値をもたらしていくかを定義する、ということです。
(ポイント)下記事項の定義をする
・顧客は誰か
・顧客の要求、ニーズ
・顧客のライバル企業に対する評価
・顧客から自社にどんなことが期待されているか
・取引の継続発展ために当社は何をしてはいけないのか(絶対に守らないといけないことは何か)
・当社の持っている(世の中から評価されている)強み、技術力とは具体的にどんなことか
・業界に対してどのような貢献をしていくのか
・顧客にとってどんな価値をもたらしているのか
共通の目標
組織が一体感を持って仕事に取組み、進化成長していくためには、「共通の目標が必要である」と言われます。
この意味は、「会社には共通の目的があり、共通の目的を実現していくための共通の目標があり、共通の目標を達成していくための各社員の目標がある」、という関係をつくることです。
そうすれば「個人目標の達成に向けた個人の行動が会社の目標達成につながる」という関係ができて、皆の努力が会社全体の目標達成につながっていくようにベクトル合わせができます。
共通の目標とは・・・例えば
職場として
・段取り改善 職場の総合計の段取り時間を1か月あたり20%短縮する
・後戻り改善 ミスや忘れにより仕事の後戻り・やり直しの時間を削減する
・進捗管理 仕事の進捗を見える化して判断しやすいようにする
・多能工化 全員が新しい仕事を一つ以上習得する
・技能レベル向上 誰か自分より技術の高い人について仕事の考え方を学び取る
・品質改善 全員が自分の仕事から品質上の改善案を2つ以上出す
など、職場としての大きな目標、共通の目標を持ち、そこから自分たちの個々の改善に置き換えて考え、自分の目標を立てていくということです。
共通の目標は思い付きで設定するのではなく、会社の目指す方向性、会社の目的から導かれてくるようにします。共通の目標を立てるためには、共通の目的が必要で、この共通の目的を社員が理解し、同じ思いを持っている状態を作っていかなくてはなりません。
共通の目的を達成するために、どんな共通の目標を立てるべきかを考えることです。その共通の目標を達成するために、各自はどんな取り組みをしていくべきか、というように現場に働きかけていきます。
職場の目標・改善目標・個人の目標
会社の共通の目的・目標が定まったらこれを社員に周知します。こうした目的目標を達するために、改善活動を行うことが必要だというように、必要性をきちんと説明し、全社員が理解をしたうえで改善活動に入っていきます。
次に、会社の目標をふまえて、職場ごとに活動目標を設定するようにします。各職場は会社の仕事の役割分担をしており、職場ごとになんらかの職責と役割を担っているはずなので、その役割に照らして職場ごとの目標を考えるようにします。
職場の目標が定まれば、次にそれを実現するための改善テーマを考えます。改善テーマが定まれば改善活動によって達成すべき目標を定め、さらに改善目標を達成するための個人の行動目標に落とし込んでいきます。
共通の目的にベクトルを合わせること
小規模工場において改善活動を活性化していくためには、会社として目指す方向性を示し、共通の目的、共通の目標を明示して社員に周知・理解・納得させていくことが重要ポイントになります。
ポイントは目的・目標の一貫性を持たせるということです。①共通の目的、②共通の目標、③職場の目標、④改善目標、⑤個人の目標が一貫性を持つことが必要です。一貫性とは、①から②、②から③、③から④、④から⑤の順に導かれてくるという関係をつくることです。
こうすることによって、個人の行動が改善目標の達成につながり、改善目標を達成ることが職場目標を達成することにつながり、職場目標を達成することが会社の目標を達成することにつながり、ひいては改善活動を通して会社の目的を達成するという仕組みを構築することができるということになります。
目的・目標に一貫性を持たせ、ボトムアップで目標を達成していくことによって会社の目的・目標を達成していくという関係を作ります。改善活動を活性化し成果を上げていくためには、共通の目的を頂点にして、山登りのようにして皆で同じ方向を向いて進んでいく、ベクトル合わせが必要です。
なお、もし共通の目的・目標を明示しているが、人によって理解の差があり、行動にバラつきがてできているような場合には、個別対応をします。
理解の仕方には人によってばらつきがあり、解釈も人によってバラバラです。バラツキのある人に対して理解を促し行動につながるような解釈ができるように個別に働きかけていくことになります。
個別に働きかけていく、社員個々に接し方を考えていくということになると、経営者の代わりに会社の目的・目標に向かってベクトルを合わせていけるような働きかけのできる、経営者と志を一にした現場リーダーを育てていくことが重要になります。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。