中小製造業の「ペーパーレス化」で困ったら-中小工場のペーパーレス化の進め方・方法をわかりやすく解説
2022年12月3日価値向上フォーラム-第54回中部VE大会にて動画講演
2023年1月21日
工場管理者の必要性
工場の現場では管理者が必要です。
作業者は自分の作業に集中し、管理者は全体を見て生産現場の進捗管理、生産性向上をマネジメントします。
船長と船員の役割がわかれているように、工場の現場でも工場の管理者と作業者は分けて設置したほうが良いです。果たすべき役割が異なるからです。
管理者のマネジメントとは
工場の現場マネジメントの主題は「技術」「生産」「人」です。
現場で働いて経験を積んだうえで現場管理者になるような人は、技術・技能に関する知識経験を持っているのが通常です。
一方で「生産」「人」のマネジメントについては教育訓練を行っていない場合があります。
工場の現場において一定の技能経験を積んだ人が管理者になる場合が多いですが、そのときに管理者としての教育訓練を受けずに「長く勤めている」「仕事に詳しい」から管理者になる、という場合があります。
しかし仕事ができるからと言って管理ができるとは限りません。管理は別の知識・経験が必要なので、管理に関する教育訓練の機会が必要です。
現場のマネジメントは仕事のマネジメントと人のマネジメントに分かれます。
① 仕事のマネジメント
・生産の予定、仕事の割り振り、進捗管理
・QCD(品質・コスト・納期)+S(安全)
・改善活動推進、生産性向上の職場作り
・機械の稼働率・採算性の把握、経営・営業の判断情報提供
② 人のマネジメント
・日報から時間の使い方を把握
・付加価値時間の割合を上げていく
・動機付け、コミュニケーション、協働意欲
・技能育成、機能向上、多能工、対応力向上
などです。
マネジメントスキルの鍛え方
マネジメントの本質は意思決定です。意思決定ができるかどうかが重要です。意思決定をするには判断基準となるものが必要です。
この判断基準は会社の基準です。会社の基準に照らして適切な意思決定ができるかどうかがポイントです。
つまり意思決定をするためには、会社の基準に照らして判断・指示ができるようになることが必要で、前提として会社の基準を明確にしていくことが必要です。
例えば生産の進捗管理やQCDなど判断・結果にトレードオフが生じる場面などにおいて、何を優先すべきか、何を重視すべきか、何に時間を使うべきか、何を達成すべきか、を決めるときの「基準」です。これを個々の価値観に委ねると判断場バラバラになって現場が混乱します。
適切な意思決定ができるようにするためには、教育訓練が必要です。
教育訓練は教育と訓練に分かれます。教育は知識の獲得です。マネジメントに必要な知識と、判断基準となる会社の基準を教えること(学ぶこと)です。
訓練は知識を仕事で使えるようにするために行う実践活動です。実際に意思決定する場面を用意して経験を積み、判断を磨いていくようにします。
管理者をどう育てるか?という問いに対しては、意思決定の場面を与えて、判断の経験を積ませる、ということです。
経営としては判断できる機会を用意していくことです。いきなり経営意思決定をさせるのではなく、小さな意思決定から経験を積ませるようにします。
現場では生産計画、QCDに関する意思決定の他、改善活動のリーダーを務めるなどして改善の意思決定を通して経験を積ませるようにします。
研修の受け方
管理者育成と言うと「研修」を受けるということが考えられます。研修は講座型の研修と実践型の研修があります。
① 講座型の研修
・QCD、5Sの意味
・生産管理とは?現場管理とは?
・実際の進め方、一般ハウツー
② 実践型の研修
・学んだ知識を自分の職場で試す
・現場の実態にあてはめて行動する
・行動→疑問→熟考→気づき
などです。
講座型の研修は一般知識を学ぶのが通常です。講座に出席して一般論を学ぶだけなので、聞いただけで終わってはできるようにはなりません。実際に現場に戻ってから知識を実践に適用して、自ら学びを継続していく必要があります。
実践型の研修は現場において具体的な問題の解決や意思決定を通じて学びます。実践を通して疑問に感じること知識の不足を感じることに対して、新たな知識を仕入れたり知識を現場に適用していくための知識を学びます。
講座型の研修と実践型の研修を組み合わせていくと効果的です。まず一般的な正しい知識、原理原則をしっかりと学び、次に実践型の研修で学んだ知識を実践する場を経験し、知識を実務で効果的・効率的に使えるようにして、自分の知恵に変えていきます。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。