【探求の時間】業務の引継ぎを組織的に進化させる4つの型③
2025年11月29日【探求の時間】生産性の誤解を解く4つの成長戦略②
2025年12月15日
生産性の誤解を解く4つの成長戦略①
「生産性を上げろ」・・この言葉に少しうんざりしていませんか。まるで今の働き方を否定されているように感じたり、あるいは単なる根性論に聞こえたり。上司から言われると思わず身構えてしまう。でも、もし生産性という言葉が、あなたを追い詰めるムチではなくて、あなたの仕事の価値を正しく測って次の一手を教えてくれるコンパスだとしたらどうでしょう。今日は生産性を上げるという4つの矢印を書いた図式をもとに、そのコンパスの使い方を解き明かしていきたいと思います。
この資料の出発点はシンプルで、生産性とはインプットとアウトプットの比率である。この図にあるような矢印の書いた図式が今日の議論の鍵になります。
さて、職場の生産性を高めることは管理職の責務の一つですが、これは部下に対して「もっと速く走れ」と号令をかけることではない。むしろチームが今どっちに向かっていて、どのルートが最適なのかを地図とコンパスを使って示すことです。インプットとアウトプットの比率というシンプルな原理をいかに戦略的に活用するかの具体的な方法論まで考えていきたいと思います。
インプットの理解
では早速図式を分解していきましょう。まず分母のインプットですが、インプットとしては人手、経費、時間が考えられます。プロジェクトに何人投入して、予算はいくらで、納期はいつまでか。誰もがまず考えることですね。これが基本になりますが、でも多くの組織が陥りがちなのが、インプットをこの3つだけで考えてしまうことです。ほかに、技術、知識、経験、方法、ノウハウという目に見えない資産、これもインプットを考える際のポイントになります。
確かに、経験とかノウハウは抽象的で数値に表せないものですが、これは会計帳簿に載せるインプットとして考えるのではありません。考え方としては「消費するもの」ではなく「活用できるリソース」と捉えることです。たとえば、新しいプロジェクトを始めるときに、「使える予算は1千万円・期間3か月」と考えるのと、「予算1千万円・期間3か月そしてAさんの持つ業界知識とBチームが去年開発した業務ツールが使える」と考えるのでは戦略の立て方が全く違ってきます。後者のほうがはるかに解像度の高い作戦が立てられる。目に見えない資産をインプットとして認識することは、自分たちの手札を正確に把握するということです。コストとしてではなく、手持ちのカードとしてみるわけです。
そう考えると、設備・機械という物理的資産についても、ただの減価償却の対象としてみるのではなく、どう使いこなすかという活用の視点で見えてきます。つまりインプットとは、目的達成のために使える武器や道具のすべてと理解するとしっくりきそうです。
アウトプットの理解
次に、分子のアウトプット、つまり産出物を見ていきましょう。これには製品・サービスが考えられますが、他にもお客様の事業への貢献、顧客満足も含まれます。
確かに、事業への貢献や顧客満足、という抽象的な言葉がアウトプットに含まれるのは疑問に持つ方もいるかもしれません。しかし、これはインプットとの時と同じく単なるスローガンではなく、単なる成果を測る物差しを変えようという提案です。
たとえばある製品を開発する会社があったとして、従来の物差しであれば不良が無く納期通りに指定量を納品したというのが満点のアウトプットかもしれません。しかし、物差しを今回のように変えて見ると、納品した製品によってお客様の業務時間が月間で50時間削減できたとか、お客様から「これなしの仕事は考えられない」という感謝のメールが届いたとか。そういう部分こそが真のアウトプットになるわけです。つまり「何を作ったか」という視点から、それによって「何が起きたか」に視点を移すということです。
インプットから変換行為があり、そして付加価値が生まれる-我々が投入したインプット、たとえば開発者の使った時間や知識が変換プロセスを経て、単なる製品という物体ではなく、顧客の業務時間の短縮という付加価値に変わった。そしてこの変換のプロセスこそが、我々の仕事そのものであります。
同じインプット、同じ開発チームでも、顧客の課題を深く理解して本当に必要な機能だけを研ぎ澄ませて開発するAチームと、言われた仕様通りにただ作るだけのBチームとでは、生み出す付加価値の大きさが全く違う。生産性の議論は、つきつめればこの変換効率をいかに高めるかという話に集約されるのです。
生産性というと我々はついインプットを減らすことばかり考えがちですが、アウトプットの質、というか価値そのものを再定義するだけで、違った世界が見えてきます。
(生産性の誤解を解く4つの成長戦略②へつづく)
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。