【探求の時間】生産性の誤解を解く4つの成長戦略①
2025年12月15日【探求の時間】生産性の誤解を解く4つの成長戦略③
2025年12月15日
生産性の誤解を解く4つの成長戦略②
生産性を上げる4つの戦略
前回まで、生産性をインプットとアウトプットの比率であると捉えたときに、インプットに何が含まれるか、アウトプットに何が含まれるか。そしてそれをどのように理解・解釈したらよいのかについて話してきました。
この基本構造を理解した上で、ここからがいよいよ本題です。生産性を向上させるための4つの戦略について見ていきましょう。普通は生産性を上げるというと、多くの人は図にある戦略①のコスト削減か、戦略②のもっとがんばるという2択で考えがちです。しかし、それだけではない全く別の成長の道筋、つまり戦略③と戦略④があると考えます。これを知るだけで、日々の仕事の選択肢がぐっと広がるはずです。
ではその4つの道を一つずつ見ていきましょう。
戦略① インプットを減らし、アウトプットを維持する
これはもっとも古典的で、いわゆる効率化のモデルです。少ない資源で同じ成果を出す。たとえば今まで3時間かけて作っていた月次レポート作成を、ツールを導入して1時間で終わらせるというようなことです。レポートの質、つまりアウトプットは同じだけど、投入した時間は3分の1になった。
でも、こればかりを追求していくと現場は疲弊しないでしょうか。もっと効率化しろ、コストを削れと。常にインプットを減らすことを求められるのは精神的にかなりきつい気がします。実はこれが戦略①の罠でもあります。戦略①はムダをなくすための有効な手段ですが、これを唯一の哲学にしてしまうと、組織は縮小均衡に陥ってしまう。必要な投資まで削ってしまったり、社員のチャレンジ精神を奪ってしまったり。ある工場でコスト削減のためにベテランの検査員を削ったとたんに不良品が流出し、結果的に会社の信用というお金では買えないアウトプットを大きく損ねたということもあります。戦略①は劇薬のようなもので、使い方と量を間違えてはいけません。
ではその限界が見えたときに取るべき戦略が、次の戦略②ですね。
戦略② インプットを維持し、アウトプットを増やす
つまりリソースは今のまま、成果をより大きくする。これは「もっと頑張れ」という根性論ではないのか?いや、違います。これは働き方を変えるアプローチであり、インプットの方法・ノウハウを改善するというのが典型例です。
たとえばある営業チームがいたとして、人数と労働時間が同じだとして、インプットは維持。でもこれまで個人の勘と経験に頼って別々に行動していた営業スタイルをやめて、チーム全体で顧客データを分析し、最も成約率の高いアプローチや対話手段を開発して共有した。その結果、チーム全体の成約件数、アウトプットが1.5倍になった。これは誰も労働時間を増やしていません。インプットの使い方の質を高めて、アウトプットを増やしたということです。つまり今ある手札の組み合わせ方を変えたり、新しい戦術を学んだりすることで戦闘力を上げるイメージです。これなら現場も前向きに取り組めそうです。
戦略③ インプットを減らし、アウトプットを増やす
戦略③はインプットを減らし、アウトプットを増やすということで、最も生産性を上げることができそうなアプローチです。従来の作り方を改善するのではなく、全く新しい変換プロセスを生み出すようなことです。この戦略の本質は既存のやり方の延長線上に答えを求めるのではなく、全体や根本をあらためて問い直すことです。
たとえば社内の業務処理プロセスが煩雑であったとして、これを少しずつ効率化-改善をするのではなく、そもそもなぜこんなに多くの承認プロセスが必要なのかと根本から考え直して、全く新しい処理プロセス・仕組みを導入する。これはチームレベルで起こせる立派な戦略③です。ここでは規模の大小ではなく、発想の転換がカギになります。
(生産性の誤解を解く4つの成長戦略③へつづく)
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。