【探求の時間】仕事に対する熱意はどこからくるのか?熱意のある人・ない人の違いについて考える①
2026年3月14日
仕事に対する熱意はどこからくるのか?熱意のある人・ない人の違いについて考える②
前回まで、仕事の熱意は意味づけからくる、という話をしました。意味づけは仕事に対してどのような解釈・理由付けをしているかという事であり、それによって仕事ぶりや熱意が変わってきます。
たとえば工場作業の具体的な場面について考えてみましょう。工場でよく行われる、5Sや次の日のための段取り作業があります。現場では整理・整頓・清掃をせよと言いますが、これを意味づけなしの状態、つまりただの作業として認識しているとどうでしょうか。それはもう単なる身の回りの片付けであり、ただ掃除するだけの時間になってしまい、面倒なことに感じてきます。しかし、ここに意味づけのフィルターを通すと、見えている世界が変わります。たとえば整理・整頓は何のために?と考えて、これは仲間にケガをさせない安全な職場を作る行動と考えたらどうでしょうか。
あるいは、ただの清掃は、単に掃除道具を持って歩き回る事ではなく、平常とは異なる異常発見のための点検整備であり、明日皆が最高の仕事をするための準備であります。段取り作業についてはどうでしょうか。面倒な段取りや運搬作業は、チーム全体の生産性を左右する重要な知的作業であります。このように考えると、仕事の意味が見出されて思考が変わってきます。ただ床を片付けている人が、頭の中では仲間をケガから守る防衛行動をとっている。面倒な運搬作業をしている人が、チームの生産性をコントロールする知的作業をしている。体を動かすだけの単純作業だと思っていたものが、頭脳労働や思いやりの行動にアップグレードされ、仕事ぶりや熱意が全然変わってくるわけです。
ところで、ここで起きている心理的な変化には、ある明確なメカニズムがあります。作業の焦点が自分から外部へと大きくズームアウトしている点に注目してください。掃除する、片付けるという言葉は、自分自身の手元のタスクしか見ていません。自分が手を動かしているという苦痛にだけ焦点が当たっています。しかし、仲間にケガをさせないとか、チームの生産性を左右するという言葉には、自分以外の周囲の人間という社会的なつながりが存在しています。人間は社会的な生き物であり、自分の行動がチームや仲間への貢献につながっていると認識したとき、単なる自己利益のための行動とは全く違うエネルギーがわいてくるのです。
自分の手元だけを見つめていると閉塞感で息が詰まってきますが、チーム全体とか明日最高の仕事をするためという未来へと視界が一気にズームアウトすることで、脳が自分たちにとって有益な社会的行動なんだと認識してエネルギーを生み出してくれます。意味づけとは、目の前の小さな作業がより大きな世界のどこにつながっているのかを発見する作業とも言えます。つながりがみえるからこそ、脳がそれを意味ある行動として処理して、私たちは納得できるわけです。
先ほどは5Sや段取り作業、運搬作業のような体を動かす作業を元に考えてみましたが、他にも現代のナレッジワーカーが日々直面する、精神的な負担が大きくて誰もがやりたくないと感じる業務についてはどうでしょうか。たとえば日報や記録作業。日報や記録作業は本当に苦痛です。意味づけがないと、ただの帰る前の記録作業です。一日の仕事が終わって早く帰りたいのに、その日の出来事を記録する。エネルギーがゼロの状態で行う最悪の苦行です。でもこれに意味づけを与えるとどうなるでしょうか。日報は振り返り能力を鍛える、自分の成長記録である。日報を成長記録として書くなんてあまり考えないことかもしれませんが、一日の自分の振り返りをすることは自分の成長に重要なプロセスです。振り返りをして目標や計画と実際に起きたことを比較して、何らかの気づきを得る。自分の現在地を確認して、次への戦略・明日からの行動を考える。そのための場であると解釈することによって、日報記録が内発的な行動になるのです。
今日話してきた意味づけの話は、会社のためにとか仕事だからと文句を言わずモチベーションを上げるための魔法のテクニックではありません。これは自分自身が自分の限りある自分の人生をどう豊かに過ごすのかという、コントロール権を自分の手に取り戻すための考え方です。
一日のうちの何時間かをどうしてもその作業に費やさなければならない現実がある。それなら、外部から強制されてエネルギーを吸い取られるただの作業として苦痛を感じ続ける・我慢を続けるより、認知の再評価・再定義を通して自分自身の価値観と結びついた意味のある時間に変えてしまったほうが、自分自身が圧倒的に有意義です。
見え方が変われば脳が変わり、行動が変わり人生も変わる。主導権は自分が握っている。これは自分自身がどう生きるかという話でもあるわけです。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。