中小製造業の「実地棚卸」で困ったら-実地棚卸を効率よく行う方法をわかりやすく解説
2022年10月16日現場リーダーのための「ルールを守る職場にする実践法」セミナーを開催
2022年10月22日
出荷ミスで困ったら-出荷ミスをゼロにした方法を紹介します。
出荷ミスとは
部品や製品の出荷に関わるミスです。例えば発送先の間違い、取違い、モノ違い、数量違いがあります。他にも不良、故障、破損したものを誤って出荷した場合も含まれます。
出荷ミスが起きると回収の手間が生じます。モノによっては手直して、再梱包、再出荷と同じ作業を繰り返すことになります。
時間と人員のロスが生じ、2~3倍の回収できないコストが追加的に発生します。事後処理のコストも増え、納期遅延の可能性も高まり、顧客からの信用喪失につながります。出荷ミスは絶対になくしたいものです。
出荷ミスの影響要因
出荷ミスは、出荷に関わる作業のどこかでミスが発生し、結果的に出荷ミスにつながるので、出荷ミスをなくそうと思えば①業務の洗い出し、②発生要因の分析、③予防策を講じるというプロセスで改善します。
もし出荷ミスが現に発生したときは、まずは再発送や顧客対応など目の前の問題に対処したうえで、①ミスの発生せいた作業の特定、原因の分析、対策の実行という流れで改善策を行います。
(1) 業務の洗い出し
出荷ミスに関わる業務は、出庫作業としてピッキング、検品、梱包、移動、保管の各業務があります。また付随する事務処理としては納品先、納品物、納期の確認、出荷日の確認、出荷指示、伝票、荷札の発行等があります。
(2)業務に伴う備品・補助資料
出荷ミスに関わる業務の中で関連する備品・補助資料として、保管場所、保管棚、棚番、品番、倉庫表示の他、作業手順書、客先ごとの要求ルール、先入先出のルール、取り出しのルールなどがあります。
出荷ミスの原因は?
出荷ミスの原因は、業務の多岐にわたって潜んでいます。問題が起きたときに局所的に対処してももぐらたたきのようになってなかなかミスが無くなりません。一度根本的に、業務全体を見渡して徹底的に原因の洗い出し・掘り下げをする必要があります。
出荷ミスの原因は、仕事の仕組みの問題、人に関する問題、管理上の問題があります。
仕事の仕組みの問題として、作業工程設計の不適切、作業手順の不適切、動作の不適切、検査・チェックポイントの不適切などがあります。他にモノの流れと情報の流れが一致していないという情物一致・不一致の問題があります。
人に関する問題としては、ヒューマンエラーに属するもの、例えば無意識、集中力、慣れ、誤判断によるミスがあります。その他、手順の無視、省略、勝手な変更などによって、作業手順に含まれたミス防止機能が発揮されなということがあります。
管理上の問題としては、問題発生後の原因分析と対策に不備がある場合があります(記録、分析、アクション)。教育上の問題としては、新人教育のルール・教育方法の問題、マニュアルの不備・結果、仕事の教え方がマズイ、OJT機会の不足(on the job training)などがあります。
出荷ミスの対策は?
上記で掘り下げた原因に対して、具体的な対策を考えます。
(1)仕事の仕組みの問題
・作業工程設計の見直し
・作業手順、動作の見直し
・検査方法、チェックポイントの見直し
・情報の流れとモノの流れの関係の見直し
(2) 人に関する問題
・ヒューマンエラー対策
情報認識時のエラー、判断時のエラー、行動時のエラーがあり、それぞれの段階に応じた対策
・注意式と強制式
注意式:注意力を上げて回避する対策と、強制式:もし注意が欠けてもミス発生時に発覚する・ストップする仕組み
・改善4つの視点(ECRS)
排除(なくせないか)、結合と分離(一緒にできないか、分けられないか)、入れ替えと代替(順序はこれでよいか、他に置き換えられないか)、簡素化(簡素化できないか)
・人の能力、適性(細かい作業についての向き不向き)、人の組み合わせ(人の組み合わせによってミスが出やすくなるケースがある)、配置の再検討(誰にどの仕事を任せるかの判断)
(3)管理上の問題
・問題発生に関するホウレンソウの仕組み
・出荷ミス発生後の原因対策の検討、改善、記録、報告の仕組み
・再発防止策と流出防止策の改善
・出荷ミス予防のための知識の習得、教育訓練機会の確保
・新人教育プログラムをつくる
・マニュアルに基づいた指導を行う
・仕事の教え方を教える、仕事を教える際のルールをつくる
・日常的、継続的なOJTの実施
・5S活動(特に「整理」「整頓」と、異常発見をしやすくするための「清掃・点検」)
出荷ミス対策の実行管理
対策を列挙したあと、グルーピングを行い、いくつかの改善案にまとめます。実行に当たってはテスト・シミュレーションが必要です。仕事のやり方を変えることによって思わぬトラブルが生じることもあるからです。できるだけリスクをさげるためにQCDの基準を満たすかどうかを検討して手を打つようにします。
実行の際は役割分担を決めて、計画を立てます。計画はいつからいつまでに、どのような順序で、だれが、どのように行うかを決めます。実行のために不足する資源も定義して、補充することが必要です。
日程や予算など優先順位を決めるときは、効果とコスト、重要度と緊急度、経済性、技術性、発展可能性、市場性、競合、顧客の要望 などをふまえて優先順位付けを行います。
実行段階に入ったら進捗管理を行います。計画段階で 工程を明示し、進捗に合わせてチェックを入れていくようにして、進捗の管理をします。進捗管理表は職場に掲示して情報共有できるようにします。
出荷ミスが多発する場合には
(1)出荷ミスが多発する、繰り返し起きるとき
・様々な原因で問題が発生し、対策をとってももぐらたたき
・同じようなミスが連続して起きる
・ミスの後始末で毎日忙しくなる、本来の仕事が遅れる
こんなときは、事後的・局所的な対策では解決しません。要因が業務の多岐にわたって潜んでいます。業務全体を見渡して広く検討する必要があります。
(2)全体を見る→要因を網羅的に検討
・出荷に関わる業務フロー全体を把握する
・業務フローを区分する
・工程区分ごとの作業手順を把握する
・作業手順ごとに起こりうる問題点の仮説を立てる
・実際の運用の観察・資料の閲覧・作業者への質問等を行って検証する
・原因の具体的な特定
・原因に対応した対策を確定させる
(3)対策の実行
・実行は計画と進捗管理を行う
・成果の確認と報告の機会を設ける
・成功要因の分析とフィードバックの仕組み化
プロにも頼める出荷ミス対策
私が会社の現場に入って出荷ミス対策プロジェクトの実行支援をします。
・管理者ヒアリング、現場検証、分析
・改善計画立案
・業務フロー、作業工程・作業・動作の分解と要因分析
・原因、対策、改善テーマ抽出
・改善テーマ別の実行計画策定
・実行、進捗管理、モニタリング、修正
・成果の測定と報告
出荷ミスが多発している職場において出荷ミスをほぼゼロにしてきています。ごくまれにミスが発生したとしてもすぐに検証・原因対策ができる仕組み化ができます。
出荷ミス対策プロジェクトをコンサルタントが内部支援するので、プロジェクトの実行を通じてかかわった社員はスキルアップします。自分たちで改善していくための能力が身に付き、仕組みが構築されます。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。