中小製造業の「在庫差異」で困ったら-在庫差異の解決方法をわかりやすく解説
2022年10月16日中小製造業の「出荷ミス」で困ったら-出荷ミスをゼロにした方法をわかりやすく解説
2022年10月22日
実地棚卸で困ったら-実地棚卸を効率的に行う方法についてポイント解説をします。
実地棚卸の意味
▶棚卸の意味
棚卸とは、在庫の品目と数量を調べ、棚卸資産の在庫数量および在庫金額を確定することです。
▶実地棚卸の意味
棚卸には、実際に存在する在庫を調べる実地棚卸と、帳簿上の入出庫記録をもとに在庫数を推定する帳簿棚卸があります。
通常は実地棚卸を行って、実際に存在する在庫と帳簿上の在庫数量を照合し、差異がないことを確認し、または差異の原因を調査します。
▶実務上の問題・課題
・棚卸の正しいやり方が決まっていない、各社各様(バラつきあり)
・差異の原因分析と対策について会社で標準化することが必要
棚卸業務の問題点
▶ 良いケースの共通点
・差異が少ない
・差異があっても原因がすぐにわかる、検証できる 対策を実行して次に生かす
・棚卸に時間がかからない
▶良くないケースの共通点
・あらゆる品目に差異が出る
・差異があっても原因がわからない、調べようがない 対策を立てずに帳簿を確定する、差異は解消しない
・棚卸に時間がかかる
時間と利益を失うので棚卸業務を効率化することは重要です。
棚卸業務の成功のポイント
POINT1.棚卸計画を立てる
・棚卸のPDCAを回すために計画を立てる
・計画性がないと棚卸が非効率、時間かかる、やり直し発生
・振り返りとフィードバックができる仕組みが必要
▶棚卸計画
・棚卸の①準備、②実行、③後処理について、いつ・誰が・何を・どのように
進めるかの計画を立てる
・実行後の振り返りとフィードバック、次の計画へつなげる仕組み(PDCA)
① 準備
□ 数カ月前
・棚卸に向けた工程表の作成(やるべきことのリスト)
・5S環境整備(特に整理・整頓)
・棚番地の設定、表示、保管場所を決めて収納
・品名リストの用意、品名リストと現物の対応(名称・番地の一致)
・支給品の確認、区分け
・不明品の調査、解消
・差異の事前把握、原因分析と差異解消
・実地棚卸日の生産計画の調整
□ 前月
・当日の時間割決め、メンバーの選定、役割分担
・用紙や道具類の用意
・棚卸の手順、ルール決め
・カウントミス対策の教育(現場・事務)
□ 前日
・生産状況(仕掛品)の確認、在庫品の棚入れの確認、用紙や道具類の確認
・メンバーにスケジュールの確認、仕事の流れ、注意点の確認
(参考)不明品と対処の例
簿外品 ⇒倉庫外にて保管、現物に表示札
途中まで組付けてあるもの ⇒構成部品の品名と数量を記入して現物に貼る
二か所置き ⇒正規の場所に戻す
混入 ⇒正規の場所に戻す
同一品で異なる名称 ⇒同一品である旨の表示
個人メモの貼り紙あり ⇒理由を確認して対処する
不良品(に見える) ⇒陳腐化・破損しているものの取り扱い(廃棄・修理)
ピッキングして戻した ⇒入庫出庫の入力履歴確認
修理品 ⇒使用の可否と入出庫入力の確認
返品・回収品 ⇒使用の可否と入出庫入力の確認
その他の不明品 ⇒カウントするものかしないものか確認
② 実行の計画
・棚卸当日のスケジュール(時間割、進行、用紙の回収、完了確認)
・入力処理と差異の確認
③ 後処理
・差異の再調査、検証
・修正、確定、報告
・差異の原因と対策
・振り返りと改善点の確認
(参考)前提情報の入手が必要な場合、下記の情報を入手
・入庫、出庫の業務フローの確認
・入庫、出庫のデータ入力のタイミングの確認
・仕掛品の取り扱いの確認
・帳票書類の確認、品名リストの有無、形式の確認
・棚番地、表示物、5S状況の確認
・ルールの存在とルールが守られているかの実態(現実の乖離)
POINT2.差異の発生要因を事前に解消する
▶差異の発生要因はあらゆる業務に潜んでいる
▶棚卸前に差異を解消する準備が重要
▶棚卸時に差異がないことを確認する
差異とは帳簿上の在庫(入出庫、仕入・売上)と実際の在庫の差異をいいます。
主な発生要因として、業務上の発生要因(入出庫作業の問題、入出庫時の帳簿処理の問題)と保管に関する発生要因(例えば不明品、簿外品の扱い、どこに何があるかの管理の問題)があります。
(1)業務上の発生要因
①入庫作業
・検品せず受領する
・仕分け、棚入れせず放置する、ルールがない
・入庫の連絡や伝票処理のルールが不明確、適切に処理されない
②出庫作業
・ピッキングリストがない、ピッキングのルールがない
・取りよけ、隠し持ち、必要以上に持ち出す、途中まで組み付け放置
・出庫の連絡や伝票処理のルールが不明確、適切に処理されない
・紛失、失敗時のルールがない
(2)保管に関する発生要因
・作業場が乱雑(整理、整頓、清掃)
・簿外品の存在
・二か所置き、通路放置
・返品、引き上げ品、故障・修理品を棚に戻す
・使用不明品(仕掛品、製品、取りよけてあるもの)の存在
・いくつかの部品を組み付けて棚に戻してあるものがある
・表示の全くないもの(品番不明)がある
・箱の表示と中身の一致、不一致
・左右の混入、他部品の混入
・一つの箱に複数の部品を保管している
・棚の入れ間違い
・古い材料、型落ちの部品がある
・支給品かどうかがあいまい
・長期滞留品(サビや変形のひどいもの)の存在
(3)原因と対策
① 発生状況を把握する
・棚卸だけでなく、業務フロー全体を把握する
・業務フローを作業手順に分解する
② 原因と対策を考える
・作業手順ごとに差異の原因を考える
・原因ごとに具体的な対策を考える
③ 月次で棚卸を行って差異がないかを確認する
POINT3.カウントミスの対策をする
▶カウントミスが発生する状況を把握する
▶カウントの仕方と注意点を決める、教える、トレーニングする
(1)問題点
・カウントの方法が決まっていない(箱から出すもの、棚からだすも の、カウント容器など)
・カウント時のルールがない(話しかけない、途中で持ち場を離れな い、勝手に指示しない、勝手に持っていかない)
・カウント対象と担当者の相性が悪い(経験、知識、短気、雑、字が 汚い、など)
(2)カウントミス対策のポイント
① カウントのルールを決める
▶カウントの方法を品目別・棚別に定める
▶カウント時のルールを決める
・数え方、数え順
・カウントシート記入法
・品目別のカウント方法、カウント時の注意点
・話かけない、持ち場を離れない、持ち出さない など
▶カウント対象物との相性を踏まえて担当を決める
② カウントミスの背景、状況を把握する
・仕掛品、カウント中の持ち出しがある
・計測器の操作ミス(水平、操作、計測単位)
・2か所置き、数え忘れ、二重カウントがある
・数えながら他ごとを考えている
・手で触らずに数えている、目だけで追って数えている
・数える順番がバラバラ、決まりがない
・読み間違い、読み飛ばしに気づかない
・暗算して計算を間違える
・カウントリストに書くときに転記ミス
・データの入力ミス
③ カウントミス対策の教育を行う
▶ポイント
・ミスの状況を具体的に特定して注意を促す
・エラーの状況を分類する(動作分析)、ミスの起きる状況を特定する
・棚ごと、品目ごとに注意点を明確にする
・書面化して役割に応じた注意点を確認する
・カウント者の性格や特徴をふまえて具体的な注意喚起をする
▶研修機会の確保
集合研修、事例講習会、担当者個別指導、グループミーティング、当日の作業前確認
▶3S(整理・整頓・清掃)
・普段から入庫、出庫の手続(作業)が決まっており、適切に運用されている
・モノの入るところ、出るところを管理する、モノと情報の動きを一致させる
・どこに何が何個あるかが倉庫で明確になっている
・異常がすぐ発見できる、不明品が放置されない
・3Sが維持継続されている、3Sに対する意識が高い
→ 日常の手続に棚卸対策が織り込まれている状況をつくること
■ カウントミス対策の他社の例
・2人一組でカウント、2回づつカウント、声を出す、指で差す
・数えたら現品票を貼り、現品票を回収してリストと照合し、カウント漏れがないことを確認する
・数字の逆読みをする、数字記入欄にマス目をつける
・環境対策-熱い、寒い、暗い、などの対策をする
・カウントのルールや禁止事項を明確にすること
・カウントの進め方のルールを決め、具体的な指示
・字の書き方に問題が多いので、記入用紙を工夫する
プロにも頼める実地棚卸の効率化
私が会社の現場に入って棚卸の効率化プロジェクトの実行支援をします。
・管理者ヒアリング、現場検証、資料閲覧、現状分析
・現状の改善、前提条件の整備(主に、5S環境・入出荷及び保管に関する業務フロー・情物管理)
・棚卸計画策定(事前・当日・事後の実施事項と順序の整理)
・役割分担、責任の明確化、目標設定、周知
・実行、進捗管理、モニタリング、修正
・成果の測定と報告
実地棚卸に時間がかかりすぎる、終わらない、頻度が増えていく、そんな問題が起きているときに、実地棚卸の効率化を支援します。原因を分析し、仕事の流れを整えて、効果的な計画を立てて、実地棚卸がスムーズにいくように手配します。
棚卸効率化のプロジェクトをコンサルタントが内部支援するので、プロジェクトの実行を通じてかかわった社員はスキルアップします。自分たちで改善していくための能力が身に付き、仕組みが構築されます。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。