5S活動-製造業で行われる5S活動とは?初心者にもわかりやすく解説
2022年6月19日過去に実施した中小企業・製造業・工場の管理・改善に関する研修
2022年6月21日
VE手法-製造業で使われるVE手法とは?初心者にもわかりやすく解説-
VE手法とは?
Value Engineeringの頭文字をとってVEと呼んでいます。
VE手法は、価値を生み出すための思考や実践のステップを明らかにしたものであり、新たな製品やサービスの開発、業務効率の改善等の技法として用いられてきました。
対象となるモノやサービスの価値を高めるための思考プロセスを体系化して、効果的かつ効率的に価値を高めていくことを実現するための、考え方と手法です。
VE手法の特徴
VE手法は対象の価値を高めます。そのために目的思考を使います。
そのモノないしその仕事・作業の目的を定義します。
現在の仕事の進め方に問題があるならば、その仕事の目的を定義し、目的を達するための新たな仕事の進め方を考えるようにします。
現在の手段からいきなり新しい手段を考えるのではなく、いったん目的に立ち返ってから、目的を達する新たな手段を考えます。
どのような仕事であれ目的が存在するはずだという考えと、目的が一つでもそれを達するための手段は無数にある、という考えに基づいています。
VEは、対象物の価値を高めるための考え方及び手法であるので、対象は様々なものが当てはまります。
VEの適用対象は、例えば製品やサービス、業務・作業です。
製品であれば、例えば工作機械や加工・建設に用いられる製品、消費者が直接使用する家電や家具のほか、工場や住宅、道路、公園などの建造物や施設も含まれます。
サービス・業務であれば、輸送、通信、医療、流通、教育などの他、営業、販売、作業、管理、間接業務などが挙げられます。
これらの製品またはサービス・業務にVE手法を適用することによって、より価値のあるモノに生まれ変わったり、より効率よく効果的な仕事の進め方に生まれ変わったりします。
会社における仕事の流れに着目して説明することもできます。
会社の業務は営業・開発・設計・調達・製造・出荷・間接業務等に部署がわかれますが、それぞれの業務においてVE手法を適用することができます。
これらの適用段階に対応したVE手法が開発されており、開発VE、調達VE、間接業務のVEと呼ばれることがあります。
このブログでは、製品などの有形物の改良・改善ではなく、業務改革にVE手法を使うことを前提に書いています。
VE手法が必要な理由
企業活動はインプットをアウトプットに変換する行為です。
工場経営を考えてみると、材料・部品を買ってきて工場で加工し、製品に形を変えて出荷します。
材料・部品が「インプット」で、製品が「アウトプット」です。工場の加工が「変換」です。インプットの資源をアウトプット製品に変換し、出荷してお客様のもとへ届けます。
インプットにムダが多く、加工が非効率である場合、生産性が上がりません。企業が生産活動によって成果を上げていくためには、仕事の仕方を常に改善していくことによって生産性を上げていく必要があります。
生産性はインプットとアウトプットの比率です。最小のインプットで最大のアウトプットが生まれれば、生産性が高いといえます。
VEはインプットの資源とアウトプットの資源に着目して、両方のバランスを見ながら最終的に生産性を高めていくようにします。
VEでは生産性向上のための4つのパターンがあると考えます。
① インプットを下げてアウトプットを高める
② インプットを一定に保ったままアウトプットを高める
③ アウトプットを一定に保ちつつインプットを下げる
④ インプットを上げるが、アウトプットをさらに高くする
VEは①~④のパターンをふまえて改善案・代替案・新規案を考察していきます。インプットとアウトプットの両方に着目して業務改善を考えていくことによって、より生産性の高まる仕事に改善していくことができるようにします。
例えば材料の歩留まりと良くする、不良をなくす、リードタイムを短縮する、仕事のムダを省くときに、単にインプットの効率化だけでなく、インプットとアウトプットの関係を見て、結果的に価値が高まるように考えます。
仕事の生産性を上げていくためには、業務改革を進め、生産活動を効率よく行って、仕事から価値を生み出していくことが必要です。
VEはインプットとアウトプットに着目して、本来の目的を達成するための新たな仕事のやり方を開拓していく方法であり、生産性を高めるための実施手順が用意されています。
生産性を高めていくための方法としてVEを用いれば、効率的かつ効果的に生産性向上にたどり着くことができます。
VE手法が工場の業務改革にもたらすメリット
工場経営・製造現場の生産性向上を考えたときに、VE手法は業務改革を進めていくための有効な手法として活用できます。
VEは実施手順を定めています。
主な流れを言うと、情報収集→機能定義→アイデア発想→代替案作成です。
それぞれ工程が決められ、工程ごとに何をすべきかの作業が示されています。
実施手順に沿って一つづつ順に実行していくことによって、価値を生み出す、現場の生産性を上げるための改善案が見えてきます。この思考プロセス・価値創出プロセスをVEを使うことによって効果的かつ効率的に進めることができます。
VE手法を使っていくことによって、短期間のうちに、より低資源で、より高い生産性を実現することができるというメリットがあります。
VE手法の活用事例 -製造現場の業務改革の事例-
最近、中小企業・製造業・工場の製造現場における業務改革について、私がVE手法を使って業務改革を行い、成果を上げた例を紹介します。
不良・ミス改善
不良・作業ミスが出る職場において、不良発生に影響を与える要因を作業分解・作業要素ごとに洗い出し、それぞれの発生要因について原因・対策を検討し、影響度の高い要因から順に対策を実行して不良・作業ミスを減らした例。
在庫差異の解消
帳簿在庫と実地在庫の数量に差異がある職場において、在庫差異発生に影響を与える要因を作業分解・作業要素ごとに洗い出し、それぞれの発生要因について原因・対策を検討し、影響度の高い要因から順に対策を実行して在庫差異を減らした例。
リードタイム短縮
生産のリードタイムを短縮したいという目標を達成するために、調達・製造・出荷の業務の流れを把握し、工程にわけて、工程を作業に分解し、作業要素ごとにリードタイムの長期化・遅延に影響を与える要因(主に時間ロス)を網羅的・徹底的に洗い出し、次にインパクトの大きい要因に焦点を当てて原因の掘り下げ・対策の検討を行い、実行していくことによってリードタイムを短縮した例。
出荷ミスをなくす
出荷ミスが多発している出荷作業現場において、入荷から出荷までの作業プロセスを把握し、工程に分けて、工程を作業に分解し、作業要素ごとに出荷ミスの発生に影響を与える要因を洗い出し、原因の掘り下げ・対策の検討を行ったうえで改善案を実行していくことによって、出荷ミスをゼロにした例。
間接部門の勤務時間短縮
間接部門の残業時間が長期化している職場において、仕事の分類、分解をして作業要素ごとに分け、それぞれの作業要素を判断基準のレベルまで分解したうえで、時間ロス発生に影響を与える要因を洗い出して一つ一つ解決していくことにより、間接部門の作業時間短縮に貢献した例。間接部門の対策としては判断基準・ルールの見える化共有化が効果的。ロスを省くだけでなく目的思考を使うことで根本的に作業の見直しができる。
VE手法を業務改革に使うことによって、効果的かつ効率的に、目指す成果を手に入れることができます。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。