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2022年10月10日中小製造業の「実地棚卸」で困ったら-実地棚卸を効率よく行う方法をわかりやすく解説
2022年10月16日
在庫差異で困ったら-在庫の差異をなくす方法についてポイント解説をします。
1.在庫とは
在庫とは、原材料、部品、仕掛品、半製品、製品のほか加工や販売のために保有する資産です。工場でいえばモノを仕入れてから製品になるまでの加工のプロセスにおいて、お金がモノに姿を変えて保有しているモノです。
2.在庫の特徴
在庫は保有する資金をモノに姿を変えたものであるから、資金を在庫に変えてしまえば、換金されるまでその用途以外には使えません。在庫が多ければそれだけ資金が拘束され、資金の使途が制限されるので、在庫が多いと「経営の自由度が阻まれる」といいます。
また、在庫は保有することで様々なコストを生み出すので、在庫が多すぎると派生的に発生したコストの分だけ利益が目減りするということが起きます。
一方、在庫が少なすぎると、必要な時に必要なものがないということになり、納期が遅れたり売上の機会を逃すことにつながって、これも機会損失として影響を受けます。
3.在庫の管理
世に出ている様々な在庫管理の本を読み比べてみると、「在庫差異」「棚卸業務」「在庫削減」が主な論点として取り上げられています。
① 在庫差異
・差異の把握
・原因分析
・差異対策
② 棚卸業務
・実地棚卸の方法
・帳簿管理、品目管理
・資産金額(利益)の確定
③ 在庫削減
・在庫コスト
・適正在庫、発注方法
・在庫削減の方法
今日は在庫差異について考えてみます。
4.在庫差異を放っておくと
現場管理者としては、在庫のサイは見て見ぬふりをしたくなるような嫌な存在です。
モノが不足していると思って追加注文したら、あとから現物が出てきて増えていたり、在庫があると思って注文しなかったら実際にはモノがなく、いざ使うときに欠品になるということもあります。
在庫の差異が出ている状態は、在庫の管理ができていないことの現れです。反対に言うと在庫の差異をなくさない限り、在庫の管理ができないことになります。
受発注業務も、棚卸業務も、入出荷作業も不正確で、確認作業を伴う大変な作業になります。
差異を解消しないまま適正在庫を決めても実際にはモノがなかったりするし、差異を解消しないまま在庫削減をするにしても必要なものがなく、不要なものがたくさんあるということになります。
在庫と密接に関連する生産のリードタイムにしても、何が正しいかの基準が定まらないので効率化・改善のしようがありません。
現場のモノに関わる管理のレベルを上げるには、まず差異を解消して、帳簿と実地を合わせていく作業が必要です。その上で、適正在庫を決めて必要量を保有し、環境変化を踏まえて過剰になれば在庫を減らしていくという仕組みを作ります。
5.在庫差異の意味
在庫差異は、帳簿上の在庫(入出庫、仕入・売上)と実際の在庫の差異のことです。
帳簿棚卸だけでは実在庫を把握できないので、実地棚卸を行って差異を把握します。差異は数量、金額で把握されます。
在庫差異が存在すると業務に様々な弊害が出ます。
・必要な時にあるはずのモノがない
・欠品、工程ストップ、納期遅れ
・不要なモノも含めて職場にモノがあふれる
・5Sできないことによるムダの発生
・棚卸業務の複雑化、負担増大、時間喪失
・原価、損失、利益の変動要因になる
6.在庫差異の発生要因
在庫差異の発生要因は、業務プロセスの様々な場面において多岐にわたって潜んでいます。
棚卸のときに差異が発覚しても、業務プロセスのどこで発生したのかはわかりにくく、しかも棚卸の時点では差異が発生した時点から時間も経っているので原因がよくわかりません。
在庫差異が大きく発生している職場では、どの差異がいつどこで発生したかがつかみづらく、なかなか解決することができません。
<在庫差異の発生要因>
①業務上の問題点
・入荷受け入れ業務の問題
・保管、ピッキング業務の問題
・出荷業務の問題
・作業設計の問題
②棚卸業務の問題点
・棚卸カウント時のミス、記録時のミス
・カウント数値のデータ入力時のミス
・入庫・出庫の伝票処理の問題
在庫差異はモノに起因して発生するものなので、モノの流れに沿って差異の発生要因が潜んでいます。
工場ではモノが入ってきて加工してモノを出荷していくので、入り口から出口までずっとモノが流れています。そこで工場では在庫の差異要因は業務プロセスのほぼすべての段階に多岐にわたって潜んでいます。
7.在庫差異の解決方法
在庫差異を解決するためには、まずモノの流れに沿って在庫差異の発生要因を広く洗い出すようにします。
次に洗い出した発生要因ごとに、原因と対策を考えるようにします。
モノの流れ、人の作業、情報の流れを着眼点にして要因・原因・対策を考えることがポイントです。
(1)発生状況を把握する
・棚卸だけでなく、業務フロー全体を把握する
・業務フローを作業手順(工程・作業)に分解する
・作業手順ごとに差異の発生要因を洗い出す
(2)原因と対策を考える
・発生要因ごとに、なぜ起きているのかの原因を掘り下げる
・掘り下げた原因ごとに、具体的な対策を考えて実行する
・月次で棚卸を行って差異がないかを確認する
8.在庫差異の発生要因の例
① 業務上の問題
・検品せず受領する
・仕分け・棚入れせず放置する、ルールがない
・入庫の連絡や伝票処理のルールが不明確、適切に処理されない
・ピッキングリストがない、ピッキングのルールがない
・取りよけ、隠し持ち、必要以上に持ち出す、途中まで組み付け放置
・出庫の連絡や伝票処理のルールが不明確、適切に処理されない
・モノの紛失・失敗時のルールがない
② 保管に関する問題
・作業場が乱雑(整理、整頓、清掃)
・簿外品の存在
・二か所置き、通路放置
・返品、引き上げ品、故障・修理品を棚に戻す
・使途不明品(仕掛品、製品、取りよけてあるもの)の存在
・いくつかの部品を組み付けて棚に戻してあるものがある
・表示の全くないもの(品番不明)
・箱の表示と中身の一致、不一致
・左右の混入、他部品の混入
・一つの箱に複数の部品保管
・棚の入れ間違い
・古い材料、型落ちの部品が混ざる
・支給品かどうか分け方があいまい
・長期滞留品(サビや変形のひどいもの)がある
・どこに何があるかが不明
9.プロにも頼める在庫差異の解消
私が会社の現場に入って在庫差異改善プロジェクトの実行支援をします。
・管理者ヒアリング、現場検証、分析
・改善計画立案
・業務フロー、作業工程・作業・動作の分解と要因分析
・原因、対策、改善テーマ抽出
・改善テーマ別の実行計画策定
・実行、進捗管理、モニタリング、修正
・成果の測定と報告
現時点で差異が5%以上あるような職場は管理の仕組みに不備があるので改善できます。
在庫差異が例えば50%以上の品目で発生しているような異常な職場においても、在庫差異を2%~5%におさえることができています。
コツとしては1000品目単位で差異をゼロにしていくような管理の仕組みをつくって差異を減らしていきます。
重症な職場では、仕組みだけ作っても人の習慣が変わらずにまた差異が出ることがあるので、継続的なモニタリング、原因対策・教育訓練を継続的に行い強い体質づくりをしていきます。
もともと管理の仕組みがあり人の意識が高いような職場では、一連のプロセス改善によって期中を通して差異が発生しないようになります。まれに差異が発生したとしてもすぐに検証・原因対策ができる仕組み化ができます。
なお管理のプロセスに問題がある職場において、決算のときに帳簿を修正して数をあわせたとしても、期中の作業に問題があるので次の棚卸のときにまた差異がでます。決算のたびに毎年毎年損失または費用が計上されることになって疲弊してきます。
どこかの時点で問題と向かい合い、プロセス改善をすることによって本当に差異をゼロにしていくことが必要です。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。