第36回中小企業経営勉強会を開催します
2022年4月18日間接業務の改善セミナーを開催
2022年5月1日
フロンティアの小林です。経営コンサルティングでかかわった小規模工場100社を分析して明らかになった小規模工場マネジメントの成功要因を紹介しています。今日のテーマは「5Sは何のためにしていますか?-小規模工場の5S活動が続かない理由-」です。
【要約】
5S活動を継続し定着していくためには目的を明確に持つことが大事です。5Sの目的はSQCDのレベルアップであり、生産性向上と人の成長につながります。5S活動を通じて社員の視野が広がり考え方が磨かれてモノづくりの仕事をしていくためのスキルアップをすることができます。
5S活動が続かない理由
5Sは「整理」「整頓」「清掃」のSが3つで3S、これを維持継続していくための清潔のS、躾・定着・習慣化のS、5つのSを合わせて「5S」と呼んでいます。
5S活動は何のためにするのでしょうか。小規模工場において5Sが定着しない理由の一つに、5S活動を行う目的がはっきりしておらず、5S自体が目的になっているケースがあります。
5S自体が目的になると、整理整頓しておしまい、さて次はどうするの?となって、5S活動が続かなくなります。5S活動が行き詰ったときは「何のために?」という目的を再定義してみることが大事です。
5Sの目的は何か?
5Sは「手段」ですので何か「目的」を持つことが大事です。例えば安全のための5S、品質確保のための5S、時間管理のための5S、コスト管理のための5Sなど。
安全、QCDのレベルアップをしていくことで生産性が向上し、プロセスで知恵を出して行動していくことで社員の成長もあります。したがって5Sの目的は、生産性向上と社員のスキルアップであり、具体的には安全とQCDのレベルアップです。
これらの目的を実現するための整理・整頓、清掃環境を整備し、維持・継続・習慣化して職場に定着させていくわけです。
5S活動を継続・活性化するための視点
5S活動を継続・活性化するための視点(目的)として、以下の3点を紹介します。
安全な職場をつくる
安全な職場をつくるために5S活動をします。安全な職場を作るときは、危険個所をみつけて改善していくことになります。
工場でよくみられるケガの状況は、「おちる(おとす)」「ころぶ」「はさまれる」です。モノを落として足に落ちる、落ちるモノ・動くモノに手を出して指が挟まれる、はみ出したモノに引っ掛かって転ぶ・・そしてケガをする。
工場は固いモノ・鋭いものが多いので、落ちる、転ぶ、はさまれるようなことが起きると大変な大けがをすることになります。
安全な職場を作るための5Sとしては、モノの整列や定位置化をして、モノの置場周りを整理整頓、置場スペースを確保して収納するようにします。歩く人の曲がり角や通路と作業場モノの置場の境目をスッキリ明確にしておくことがポイントです。
危険・ケガは不安全状態から起きると言います。工場において不安全な状態とは例えばモノのはみ出し、立てかけ、積み上げ、直置きなどです。
これらが落ちる・転ぶ・挟まれるのケガ要因の発生につながり得ます。状態を改善していくことで安全を確保していきます。
また、危険・ケガは不安全行動から起きると言います。急に走り出したり、後ずさりする、急な動作のほか、重要物を両手でもって(両手がふさがった状態で)歩くなども危険です。
危険な動作を知り、安全な行動・動作ができるように、自分の意識を変えていくとともに、モノの置場・収納、作業場の環境を整えていくことが必要です。
時間のロスをなくす
時間のロスをなくすために5S活動をします。
探す・迷う・手待ち・やり直しの4つの行為は時間を大きくロスして価値を生まない行為なので、4大ロスと言われています。
モノを探す、情報を探す、何が必要なのかを迷う・・・4大ロスを生むような職場環境になっていれば、5S改善します。5Sが出来ていないと4大ロスが起きやすいです。モノの整理整頓ができていないから「探す」、情報の整理整頓ができていないから「迷う」ということが起きます。
ミスも時間ロスを生みます。間違いや忘れがあって後戻り、やり直しが生じると時間を失います。この失った時間からは価値は生まれません。
ミスの多いポイントを特定して知っておく、表示物やチェックリストなどで情報おw整理整頓しておく、過去にミス・後戻りが起きた場面を分析し、5Sの観点から職番環境を変えていくことが必要です。
動作のムダも時間のロスを生みます。モノの置き方に問題があるために、しゃがむ・歩き回る・持ち上げる・積み替えるなどの動作のムダが生じ、時間を失います。
運搬のムダも時間のロスを生みます。モノの保管場所や移動の動線に問題があり、何度も往復する、歩いて移動する、積み替え・積み直しが生じるなど、時間を失うことになります。
動作のムダ・運搬のムダをなくすようにモノの整理整頓を考えていくと、改善案が出てくると思います。
コスト削減、効率化
コスト削減、効率化のために5S活動をします。
必要以上の材料・工具類・資材の保有・放置があると、モノの稼働率が悪いだけでなく、モノが傷み・劣化して使いたいときに使えないことがあります。
モノが多いと、動きのないモノがあちらこちらにあって、どこかに山積みになったり奥の方へ行ったりして、モノがあるのに「ない」となって新たにモノを買ったりします。
モノが多いと余分にコストがかかることがあるので、必要な時に必要なモノが流れていくように、モノの数量、置き方、保管方法、出し入れの方法などの方法を考えて規律を持たせるようにします。
在庫のムダも追加的なコストを生み出し、時間と利益を失います。仕掛品の作り置き、工程にため込む、製品の作りすぎ、必要以上に用意するなどによって各工程・保管棚にモノがあふれていきます。そうすると場所が狭くなって作業性も悪くなってきます。
モノはすべてどれくらい必要なのかを見極めて、適正量を決めていくことが大事です。そしてモノは流れてこそ生きてくるので、モノの量・保管場所・動線を考えて、モノが停滞せず流れていくように改善していくことが大事です。
5Sを定着させるには
小規模工場を多々回った経験から、工場と工場を比較してみると違いがはっきりと見えてきます。同じような規模・仕事をしているのに、5S活動が定着している工場と5S活動が定着しない(続かない)工場があります。5S活動が続かない工場の共通点を探してみると、「目的」が抜け落ちたまま5S活動を行っているという点があります。
5S活動を始めるきっかけは色々あると思いますが、「言われたからやる」ということでは5S自体が目的になって、続けていくのが難しくなります。
また、5Sのことを単なる片付けや掃除のようにとらえていると、5S活動の発展性が無くなり、飽きが出てきます。
5S活動をする目的は何かを考えて定義し、職場で目的達成のために5Sを行う、そのための知恵を出し合う。そうして職場の5S環境を整備していく・・・
目的をもった5S活動であれば、5Sをやった先の目指すところがあるわけなので、5S活動に身が入り、知恵が出てきます。
5S活動の次の一手が浮かび、実際に行動して職場に変化が見えてくれば、次への意欲もわいてくるということです。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。