中小製造業・小規模工場の製造現場において作業手順書が必要な理由
2022年6月19日VE手法-製造業で使われるVE手法とは?初心者にもわかりやすく解説
2022年6月20日
5S活動-製造業で行われる5S活動とは?初心者にもわかりやすく解説-
工場の5S活動とは
5Sは整理・整頓・清掃・清潔・躾のSを取って5Sと呼んでいます。
整理は不要なものを処分して必要なものだけ手元に残すことです。
整頓はモノの置き場所を決めて、どこに何がどれくらいあるかがわかるように表示することです。
清掃は隅々まで掃除することと合わせて、異常点検を行って異常を察知し最適な状態を維持するようにすることです。
整理・整頓・清掃を継続的に行うことによって、清潔な状態を保ち、活動を維持継続して習慣まで高めます。
整理・整頓・清掃を行い、清潔な状態を作り、維持継続して習慣まで高めていく。規律と緊張感をもって最高の仕事環境を作っていくことを総称して、5S活動と呼んでいます。
工場の5S活動の必要性
5Sが出来ていないとQCDに悪影響を及ぼします。5Sができていなければ、たとえどんなにQCDのレベルアップに取り組んだとしてもよくなりません。
一時的にQCDが改善されることはあっても頭打ちします。
QCD向上に取り組んでいるのにイマイチ良くならないな、という工場は、5S活動の取り組みを見直してみる必要があります。
5Sができていないと、整理整頓ができていないことから作業ミスにつながったり判断ミスが生まれたり、やるべきことをやり損ねることがあって不良が出ることがあります。
5Sができていないとモノをなくしたり探したり、やり直したりして時間がかかり、コストが余分にかかってしまいます。工場にモノが多ければ運搬や積み替え作業が追加的に発生して時間をロスします。これらは追加的なコストとなって利益を圧迫します。
時間のロスはコストだけでなく、リードタイムに影響します。生産時間・作業時間のバラつきが生まれ、リードタイムにばらつきが出ます。5Sができていないとモノが停滞し、素早くモノを流すことができず、在庫も増えて、リードタイムの柔軟性が阻害されます。
5SができていないとQCDに悪影響を及ぼします。QCDを高めていくためには、前提として5S活動を進めて整理・整頓・清掃の行き届いた職場環境を作っていく必要があります。
5S活動の進め方
まずは整理から
5Sを進める際は、まず整理から取り掛かります。整理ができていないと整頓がやりきれないからです。いるものいらなものがあふれている状態で整頓するのは難しいです。なのでまず整理から始めます。
整理をせずに整頓をしたために、モノを端に寄せたり集めたり並び替えたりするだけで、結局片付かなかったという例が多いです。まず整理をして、いるものだけを職場に残すことが大事です。
整理の仕方は、もし職場にモノがあふれていて、いるものかいらないものかの判別もつかず、今まで本格的に5Sもやったことがないよ、という場合は、1年基準で一斉に整理をすることをお勧めします。
1年という基準を設けて、1年間動きのないものはすべて「不要物」と判断し、処分します。このとき日にちをきめて全社的に一斉にやる方がよいです。少しずつ、タイミングを見て捨てよう・・といっていると仕事の忙しさに追われて中途半端になってしまいます。日にちをきめて全社一斉に、1年間動きのないものを1箇所に集めるようにします。
一度集めたものを皆でもう一度判別し、いらないものを特定して処分していきます。中には自分は使わないけれどほかの部署の人が使っているというものもあるからです。
1箇所に集めるとその数の多さに驚きます。20人~50人規模の工場で一斉に整理をすると、トラック2~3台分になることがあります。パレットに載せて並べると20パレット~30パレット分になることも珍しくありません。
これだけの動かないモノが場所を占拠していたのですから、それはそれは「狭い」わけです。5Sが出来ていない工場ではよく「うちは狭いから仕方ない」という言葉がよく聞かれますが、これは整理ができていないことのサインでもあります。
次に整頓
整理が済むと、現場にはいる者だけが残るので、あとはこれらの物に住所を決めて表札を出すようにします。
整頓をするときは工場の地図を用意して、マップにモノの流れと作業動線を書き込んで全体像を把握します。そのうえで必要な場所に必要なものを配置するように検討します。
場所が決まったら一目見て分かるように大きく表札を出すようにして表示します。
動線をふまえたモノの配置にしないと、いちど出したものを戻すのが大変になり、モノが定位置に戻らないことがあるので位置決めの際は動線をふまえるようにします。
モノは直置き禁止です。
直置きするとモノの流れが悪いので、そこにモノが根を張って停滞し、そこに他の物が集まってきて、あっというまにモノが平たく場所を占拠するようにになります。
直置きを見つけたらすぐに直すようにしないと、いつのまにか散らかってしまいます。
ローラーを付けたり台車を活用するなどして物の流動性をふまえたモノの置き方も考えていく必要があります。
清掃する
整頓出来たら清掃しましょう。
整頓ができていないうちから隅々まで掃除するのは難しいので、整頓してから清掃します。
清掃は内容を具体的に決めるようにするのがポイントです。
清掃ほど仕上がりの感性に人によるばらつきの多いものはありません。
同じ状態であっても、人によっては「とてもきれいになった」と言い、ある人は「これでは汚い」と言います。
キレイか汚いかの基準が人によってバラバラです。なので清掃は会社としてどのレベルでやるのが正しいのかの基準を設定する必要があります。
清掃の際は対象・道具・程度を明確にすることがポイントです。
例えばトイレ掃除についても、トイレの何を掃除するのでしょうか。
便器、水のタンク、床、窓、扉、カベなど掃除の対象は様々あります。
また、何を使って掃除するのでしょうか。
ぞうきんなのかモップなのかブラシなのか、掃除道具は様々あります。
さらに、どの程度掃除するのでしょうか。5分くらいでしょうか。それとも20分くらいでしょうか。
ピカピカになるまでやるのか、とりあえずザッと磨けばよいのでしょうか。掃除の感覚は人によってバラバラなので、掃除の基準を決めることが大切です。
だれがやってもだいたい同じ、納得いくレベルになるのであればあまり細かく決める必要はないかもしれませんが、もし掃除の結果にバラつきがあって困るようなら基準を細かく設定する必要があります。
清掃は点検をセットにします。清掃は単にキレイにするだけでなく、異常察知、異常予防の目的を含みます。
特に機械清掃、設備清掃は点検が大事で、むしろ清掃は異常点検のためにするといえます。
普段から隅々まで清掃が行き届いていれば「いつもと違う」状況に気づきやすく、異常を察知できます。
また清掃の際に点検を兼ねることで事故・故障・ケガなどの危険を回避するようにします。
清掃は点検とセットで行うので、「清掃点検」と言います。
整理、整頓、清掃が出来たら、これを維持継続します。維持継続していくための仕組みがいるでしょう。繰り返すことによって定着させていきます。定着するまではマメに時間を設けたりチェックする場を作ったりする必要があることがあります。
5S活動の実践のポイント
5Sは目的を持って実施することが大事です。
5S自体が目的になると長続きしません。
品質を高めるため、コストを抑えるため、納期に柔軟に対応できるようにするために、整理・整頓・清掃の環境を整えていくようにします。
5S活動からQCDの向上につながるという実体験があると、5Sの重要性に気づくようになり、継続活動に発展していきます。
工場の5S活動は目的を明示してQCDないし安全、技能向上などと結びつけて取り組んでいくと効果が出てきます。
株式会社技術経営フロンティア・代表コンサルタント。中京大学大学院ビジネスイノベーション研究科修了・修士(経営管理学)。日本中小企業学会、日本物流学会所属。公益社団法人日本バリューエンジニアリング協会正会員・専門家登録(Value Engineering Specialist)。